「Professionalにアップグレードしたのに、欲しいレポートが作れなかった」——この経験をした方は少なくないと思います。私もHubSpot Japan CSMとして多くのお客さんから「このレポートが作れないんですが」という相談を受けてきました。ProfessionalのカスタムレポートビルダーはStarterと比べて格段に自由度が上がりますが、それでも限界があります。今回は正直に「できないこと」を整理します。
結論:HubSpotのカスタムレポートビルダーは「横断集計」と「計算式の複雑化」に弱点があります。 この制限を知った上で補完手段を持つことが重要です。
HubSpotカスタムレポートでできないこと
1. 複数オブジェクトをまたいだ計算
HubSpotのオブジェクト(コンタクト・会社・商談など)を跨いだ計算は苦手です。
できない例:
- 「会社ごとの総契約金額」÷「その会社の担当者数」(=担当者1人あたりの売上)
- 「マーケティングが獲得したリード数」÷「そのリードからの成約数」(=マーケ→営業の引き渡し率)
これらは「別々のオブジェクトのデータを持ってきて計算する」という操作が必要で、標準のレポートビルダーでは対応していないことがあります。
2. 前年同月比・前週比の自動計算
「先月と先々月の比較」は標準でできますが、「前年同月比」の自動計算は設定が難しく、多くの場合手動での計算が必要です。
3. 複雑なフィルタリング(深いAND/OR条件)
「(条件AかつB)またはC」といった複合条件は、一定の複雑さを超えると設定できなくなります。
4. 計算プロパティの複雑な数式
HubSpotには「計算プロパティ」という機能があり、簡単な計算(例:月額×12=年額)は自動化できます。しかし、複雑な計算式(条件分岐が入るものなど)には対応していません。
5. 他ツールのデータとの組み合わせ
HubSpot内のデータだけが対象です。「HubSpotの商談データとGoogle Analyticsのウェブトラフィックを組み合わせたレポート」といったツール横断のレポートはできません。
6. リアルタイムでない集計
HubSpotのレポートはリアルタイムに更新されますが、「特定の時点のスナップショット」を保存してトレンドを追う機能は限定的です。「毎週月曜時点のパイプライン状況の推移」を追いたい場合、手動でデータを記録するか、外部ツールが必要です。
Professionalで「できること」との比較
誤解を防ぐために、Professionalで追加されるレポート機能も整理します。
Professionalで追加される主な機能
- カスタムレポートビルダーの利用
- アトリビューションレポート(どのマーケティング施策が成約に貢献したか)
- 25個のダッシュボード(Starterは10個)
- カスタムファネルレポート(ステージ間の転換率)
- 目標値の設定とトラッキング
これらは実際に便利で、Starterから大幅に使えることが増えます。
限界を補う現実的な方法
方法1:Claude Code + HubSpot API
前の記事でも書いた通り、APIを使えばカスタムレポートビルダーの制限を超えた集計が可能です。特に「複数オブジェクト横断の計算」と「カスタム定義の指標集計」はAPIが最も柔軟です。
方法2:Google Looker Studio(無料)
HubSpotのデータをGoogle Looker Studio(元Data Studio)に接続して可視化する方法です。Looker Studioは接続が比較的簡単で、柔軟なグラフ作成ができます。ただしHubSpot公式のコネクタは有料(月数千円〜)のことが多いです。
方法3:定期CSV書き出し + Excel/Sheets
地味ですが確実な方法。必要なデータをCSVで書き出して、Excelまたはスプレッドシートで加工する。AIの活用はできませんが、運用コストが低いです。
方法4:Supermetrics(有料)
HubSpotをはじめ複数のマーケティングツールのデータをGoogle SheetsやLooker Studioに連携できるサービス。精度は高いですが、月額コストがかかります。小規模チームには割高なことが多いです。
費用対効果で考える
Professionalへのアップグレードが月数万円かかる場合、「そのコストを払ってまで欲しいレポートはあるか」を先に考えることをお勧めします。
私の経験では、多くの場合「Claude Code + API」で7〜8割のニーズは満たせます。 Professionalの価値はレポートよりも「ワークフロー・シーケンスの高度化」にある場合が多いです。
限界・注意点
レポートの限界を乗り越えようとして、複雑すぎるシステムを作ってしまうことがあります。 運用コストを含めて考えると、「少し不便でも標準機能で妥協する」という選択肢も合理的です。
APIで作ったカスタム集計は属人化のリスクがあります。 「あのスクリプトを作った人がいなくなったら誰も動かせない」という状態は避けたいです。ドキュメント化は必須です。
まとめ
HubSpotのカスタムレポートは便利ですが、限界があります。その限界を理解した上で「HubSpotの標準機能でできること」と「外部手段で補うこと」を切り分けることが、現実的で無駄のない使い方です。
次回予告
次回はHubSpotのデータをGoogle Sheetsに自動連携する方法を解説します。定期的なデータエクスポートを自動化したい方に向けた実践的な内容です。