HubSpotを使いこなせない本当の理由【ツールの問題ではない】

岩間悠一

岩間 悠一

元HubSpot Japan カスタマーサクセスマネージャー/Hareka合同会社 代表

200社以上のHubSpot導入を支援。現在はHubSpotコンサルタントとして独立。CRM導入から活用定着・AI連携まで一気通貫で支援しています。

「HubSpotを導入したのに、誰も使ってくれない」——この悩みを持つ方のほぼ全員が、最初に「ツールの問題」だと考えます。「設定が複雑すぎる」「UIがわかりにくい」「もっといいツールがあるはずだ」。でも私が200社以上の支援を通じて見てきた限り、根本的な原因はほとんどの場合、ツールではなく「人・プロセス・文化」の問題です。

結論:HubSpotの定着失敗は「なぜ使うのかが伝わっていない」「使うと損をする設計になっている」「使わなくても困らない環境がある」の3つがほとんどです。

原因1:「なぜ使うのか」が伝わっていない

最もよくある原因です。

営業担当者の立場から考えてみてください。「今日からHubSpotに入力してください」と言われたとき、「なぜ?」と思いませんか。

  • 自分に何かメリットがあるのか
  • 入力したデータは誰が何に使うのか
  • 入力しなかったらどうなるのか

これが説明されないまま「とにかく入力して」と言われると、人は動きません。

解決策:「使うと自分が得する」という具体的なメリットを示す

例えば:

  • 「HubSpotに入力されている商談は毎朝Slackに通知されて、上司からのフォローが入る」
  • 「過去の商談記録を見れば、同じ業種の成功事例がすぐわかる」
  • 「提案資料の送付記録がHubSpotに残るから、週次報告が楽になる」

「管理される道具」ではなく「自分の仕事を楽にする道具」として認識してもらうことが定着の第一歩です。

原因2:使うと損をする設計になっている

「HubSpotに入力すると、上司からの追跡が厳しくなる」「商談件数が可視化されて、少ないと怒られる」——こういう文化があると、入力を避けます。

これは特に「CRMを管理目的で導入した」企業でよく起きます。CRMが「監視ツール」として機能すると、現場は入力しなくなります。

解決策:CRMを「問題提起のツール」ではなく「問題解決のツール」として使う

例えば、商談が止まっているレコードを見て「なぜ止まっているの?」と責めるのではなく「何か困っていることはある?一緒に考えよう」というスタンスで使う。

マネージャーがCRMのデータを使って指摘するだけでなく、支援のために使うカルチャーを作ることが大切です。

原因3:使わなくても困らない環境がある

CRMに入力しなくても、別の方法で仕事が回っている場合、定着しません。

よくあるパターン:

  • 日報・週報をExcelで管理していて、HubSpotへの入力が「二重管理」になっている
  • 商談状況は営業担当者が頭の中で管理していて、「必要なときに口頭で聞けばいい」という文化がある
  • マネージャーがHubSpotを見ず、結局メールで状況確認している

解決策:HubSpotを「唯一の正式な記録場所」にする

「商談の状況確認は全部HubSpotで見る。HubSpotにないものは存在しない」というルールを作ることで、入力せざるを得ない環境を作ります。ただしこれはトップダウンで決める必要があります。

原因4:最初の設定が現場に合っていない

ツール側の問題ではありますが、「HubSpotの設定が現場の業務フローと合っていない」という問題もあります。

例えば:

  • パイプラインのステージが現場の実態と合っていない(「こんなステージはうちにはない」)
  • 入力項目が多すぎて、何を入れたらいいかわからない
  • モバイルでの入力が想定されていない(外回り営業に対応できていない)

解決策:設計を現場担当者と一緒に作る

設計を「上が決めて現場に使わせる」ではなく、「現場の人も交えて一緒に作る」プロセスを踏むことで、「自分たちが作ったCRM」という意識が生まれ、定着しやすくなります。

原因5:導入後のフォローがない

最初にレクチャーを一度やっただけで終わっているケースは非常に多いです。

HubSpotは機能が多く、最初にすべてを覚えることは難しいです。使いながら覚えていくのが現実であり、そのためには継続的なサポートが必要です。

解決策:月次または週次の「CRMレビュー会」を設ける

15〜30分でいいので「HubSpotの使い方・困ったこと」を話し合う機会を作る。これだけで定着率が大きく改善します。

まとめ:ツールを変えても解決しない

「HubSpotが定着しないからSalesforceに変えよう」「別のCRMに乗り換えよう」という発想は、原因が「人・プロセス・文化」にある場合、まず解決しません。ツールを変えても同じ問題が繰り返されます。

まず「なぜ使われていないのか」の本質的な原因を探ることが、回り道のようで最も確実な解決策です。

限界・注意点

文化の変革は時間がかかります。 設定を直せば明日から使われる、ということにはなりません。特に長年の習慣(Excelでの管理など)を変えるには、半年〜1年のスパンで考えることが必要です。

強制的な導入は逆効果になることがあります。 「入力しなかったら評価を下げる」といった強制は短期的に数字を改善しますが、品質の悪いデータが増えるという副作用があります。

次回予告

次回は「HubSpotのCRMデータ入力が定着しない問題の具体的な解決策」を、より実践的なレベルで解説します。

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