HubSpotを導入したのに誰も使わなくなる理由と解決策【元HubSpot Japan CSMが解説】

HubSpotを導入したのに誰も使わなくなる理由と解決策【元HubSpot Japan CSMが解説】

岩間悠一

岩間 悠一

元HubSpot Japan カスタマーサクセスマネージャー/Hareka合同会社 代表

200社以上のHubSpot導入を支援。現在はHubSpotコンサルタントとして独立。CRM導入から活用定着・AI連携まで一気通貫で支援しています。

「HubSpotを導入したのに、気づけば誰も使っていない」「現場がなかなか入力してくれない」——CRMの導入支援をしていると、この悩みは本当によく耳にします。

私はHubSpot Japanにてカスタマーサクセスマネージャーとして約4年、200社以上の導入・活用支援に携わってきました。その経験の中で痛感したのは、「定着しないのはツールの問題ではない」という事実です。

この記事では、HubSpotが定着しない本当の理由と、それを解決するための具体的なアプローチをお伝えします。


誰も使わなくなる企業に共通する「ある1つのパターン」

さまざまな企業を見てきた中で、定着に失敗している企業には共通点があります。それは「CRM推進の責任者がいない、またはトップのコミットが薄い」という点です。

少し掘り下げると、こういう構造です。トップのコミットが薄いから、社内に推進担当者が置かれない。推進担当者がいないから、現場を動かす力(強制力)が生まれない。その結果、誰も使わない状態が続く——。

ツールを入れることで満足してしまい、「あとは現場が使うだろう」と放置するパターンです。これはHubSpotに限った話ではありませんが、HubSpotは特に「使いこなすほど強いツール」なので、推進なき導入では本来の価値が何も発揮されません。

典型的なケースのひとつが、マーケティングハブを導入したのにマーケティング担当者がいない、という状況です。ツールが入っても、それを動かす人が社内にいなければ、ただの空箱になってしまいます。


導入直後は使われていたのに、3〜6ヶ月後に使われなくなる理由

「最初は使っていたんですが……」という相談も多いです。これにも典型的なパターンがあります。

導入直後は、顧客側の推進担当者(社内PMOのような役割の方)が旗振り役として積極的に動いてくれていました。「このデータは入力してください」「このレポートを見て確認しましょう」と社内をまとめてくれていたのです。

ところが、そのキーパーソンが3〜6ヶ月後に退職してしまう。プロジェクトはその人の頭の中にあることが多く、引き継ぎもままならないまま、知識もノウハウもブラックボックス化します。

問題は退職そのものではなく、その後です。トップが後任の推進担当者を立てなければ、誰も旗を振らない状態になります。現場は「入力しなくても誰も何も言わない」という空気になり、徐々に使われなくなっていく——。

これは本当によくあるパターンです。逆に言えば、「推進担当者が辞めても、次の担当者が立てられる体制」があれば防げる問題でもあります。


「現場が入力してくれない」のはなぜか

入力定着の問題でよくある誤解は、「現場がやる気がないから」という理解です。しかし実際は、構造的な問題があります。

根本にあるのは、**推進部門(IT・経営企画・営業企画)と現場の間にある「問題意識の隔たり」**です。

推進部門の視点:情報を集めて分析し、改善施策を考えたい。CRMのデータが充実すれば、どこにボトルネックがあるかわかり、打ち手が見えてくる。改善することが自分たちのKPI・実績になる。長期目線で見ている。

現場の視点:楽にたくさん売りたい。CRMへの入力は、工数が増えるだけで、短期的には仕事の効率を下げる行為に見える。今日・今月の売上を作るプレッシャーが最優先であり、入力に時間を使うより電話一本かけた方がいい、と感じている。

この二者のインセンティブは、根本的にズレています。推進部門がいくら「入力してください」と言っても、現場には動く理由がありません。これは、現場が悪いのではなく、構造的な問題です。


解決策:トップダウンでしか解決できない

現場とのインセンティブのズレを埋める方法は、ひとつしかありません。トップダウンで強制力を持たせることです。

具体的には、以下の3つを徹底することが効果的です。

1. 「なぜ入力するのか」の意味をトップが直接伝える

「CRMに入力してください」という言葉だけでは、現場は動きません。「なぜその入力が必要なのか」の意味を、トップが明確に語る必要があります。

「短期的には手間に感じるかもしれない。でも、会社が中長期で効率よく売上を伸ばすために、データを積み上げることが必要だ。それも含めて仕事だ」——このメッセージをトップが直接伝えることが出発点です。

担当者から伝えても、現場には響きません。誰が言うかが重要です。

2. 入力された数字で会議を回す

トップが「入力が必要だ」と発言しても、実際にその数字を見て使っていなければ、現場は「どうせ見てないじゃないか」と感じます。言葉と行動が一致していないと、メッセージは空振りに終わります。

重要なのは、CRMに入力されたデータをもとに営業会議・経営会議を行うことを徹底することです。「入力された数字でレポートを作り、そのレポートで会議する」という流れを作ることで、「入力しないと会議が成立しない」状態になります。

入力することが会議の前提になれば、現場は入力せざるを得なくなります。

3. 評価に直結させる

最も強い強制力は、評価への影響です。「CRMには入力していないが、売上は上げているから評価してくれ」が通ってしまう環境では、入力は定着しません。

「CRMに入力された活動データが、評価の材料のひとつになる」という仕組みを作ることで、入力することが自分の利益につながると現場は理解します。評価に直結する、というのはシンプルですが最も効果的な施策のひとつです。


定着させるために「導入前」にやっておくべきこと

ここまで「定着させるための解決策」を述べてきましたが、理想的には導入前から体制を整えておくことが重要です。

最優先でやるべきことは、権限を持ったキーパーソン(取締役や社長)をHubSpot導入・活用に巻き込み、その人が責任を持って推進をドライブする体制を作ることです。

その人のもとで動く推進チームを社内に配置します。PMOや導入支援担当として、社内の各部門とツールの橋渡しをする役割です。

さらに、現場にも「チャンピオン」を置くことをおすすめします。チャンピオンとは、現場の中でHubSpotを積極的に使い、周りに教えたりフィードバックを推進チームに回したりする役割の人です。推進が「上から下への一方通行」でなく、現場から盛り上がる動きが生まれると、定着の速度が変わります。

体制づくりと並行して、インセンティブ設計(会議での活用・評価への連動)を事前に決めておく。これが揃っていると、導入後の定着がスムーズになります。


事例:定着しない状態から「使える状態」に変えたアプローチ

実際にHarekaが支援した企業で効果のあった取り組みを、企業が特定されない範囲でご紹介します。

1. トップから各部門マネージャーへ明確なメッセージ

特に営業マネージャーに対して、「あなたのチームが数字を入力すること、入力させることも、あなたの仕事だ」と社長が直接伝えました。マネージャーが責任者として機能することで、チーム全体の動きが変わりました。

2. 推進担当を社長室直下に設置

推進担当を一般の部門ではなく、社長直下に設置することで、発言力と影響力を確保しました。「偉い人の下にいる人」という位置づけが、他部門との調整をスムーズにしました。

3. 現場チャンピオンの選定

各チームから1名ずつチャンピオンを選定。HubSpotを積極的に使い、現場の疑問や不満を推進チームにフィードバックする役割を担いました。「使う側の視点」が推進側に届くようになったことで、ツールの改善サイクルが回り始めました。

4. 現場が使いやすい環境の整備

「わからないことをすぐ聞ける窓口」を作り、わかりやすいマニュアルを整備しました。ここで大事なのは「マニュアルを作ればいい」ではなく、「現場が理解できるように書かれているか」です。難解なマニュアルは読まれません。

5. レポートを事前に準備し、会議で必ず使う

入力したデータが反映されるレポートを最初から準備し、毎週の営業会議・月次の経営会議でそのレポートを使うことを徹底しました。「入力しないとレポートが不完全になり、会議で説明できなくなる」という状態を作ったことで、入力率が大幅に改善しました。


参考:HubSpot公式が公開する好事例(AnyMind Group)

このセクションは、HubSpotが公式に公開している他社の導入事例を参考としてご紹介するものです。Harekaの支援実績ではありません。

ここまでお伝えしてきた「定着のための要素」は、私の現場経験だけから導いた話ではありません。HubSpotが公式に公開している事例でも、まったく同じ要素が成功の鍵として語られています。

AnyMind Groupは、世界13の国と地域に拠点を持つグローバル企業です。同社はかつて、「営業活動のブラックボックス化」と「顧客情報のサイロ化」という課題を抱えていました。各拠点がバラバラのツールやスプレッドシートで顧客情報を管理しており、全拠点の状況をリアルタイムで把握できない状態が数年続いていたといいます。

HubSpotを導入・定着させた結果、一部拠点では売上が400%超の成長を記録しています。その背景にあった施策は、以下の5点です。

  • CFOと事業責任者が主体となってオーナーシップを持ち、推進をリード
  • プロジェクトチームのリソースを段階的に拡充し、推進体制を整備
  • 営業がすぐ使い始められるよう、事前にデータ移行とパイプライン整備を完了
  • 各国の言語別サポート窓口やオンラインFAQを整備し、現場の疑問に即対応
  • 営業会議・経営会議でダッシュボードを必ず活用し、「入力しないと会議が成立しない」状態を構築

経営層のコミット、推進体制の整備、現場へのサポート、そして会議でのデータ活用——これは私が現場で200社を見てきた中で言い続けてきたことと、完全に一致しています。

CRM定着の成否は、ツールではなく「経営のコミットと推進体制」で決まる。この事例がそれを明確に示しています。

出典:HubSpot公式導入事例 AnyMind Group


まとめ:HubSpotが定着しないのは、ツールの問題ではない

HubSpotを導入したのに定着しない——その原因は、ほぼ例外なく「体制とインセンティブ」の問題です。

ツールがどれだけ優れていても、推進する人がいなければ使われません。トップが言葉でコミットしても、実際の会議や評価に反映されなければ現場は動きません。

定着のために必要なのは、以下の4つです。

  1. トップのコミット——「入力の意味」を直接現場に伝える
  2. 推進体制——権限のある人物を旗振り役として、推進チームと現場チャンピオンを配置する
  3. 会議での活用——入力データで会議を回し、「入力しないと困る」状態を作る
  4. 評価への連動——CRMの活用が評価に影響する仕組みにする

この仕組みがあって初めて、CRMは「使われるツール」になります。


よくある質問

Q. HubSpotが定着しない一番の原因は何ですか?

A. ツールの問題ではなく、推進者の不在とトップのコミット不足です。誰が責任を持ってCRM活用を推進するのかが明確でない企業では、どんなツールを導入しても定着しません。

Q. 現場がCRMに入力してくれないときはどうすればいいですか?

A. 推進部門と現場のインセンティブのズレが根本原因です。トップダウンで「入力の意味」を伝え、入力されたデータで会議を回し、評価に直結させる——この3つを組み合わせることで改善します。「入力しないと仕事が回らない・評価されない」という状態を作ることが重要です。

Q. 定着のために導入前にやるべきことは何ですか?

A. 権限者(取締役・社長)を推進のオーナーとして巻き込み、その下に推進チームと現場チャンピオンを配置する体制づくりが最優先です。あわせて、会議でのデータ活用と評価への連動を「導入前に決めておく」ことで、導入後の立ち上がりがスムーズになります。


HubSpotの定着・活用でお困りの方はHarekaへ

「導入したけれど使われていない」「現場が入力してくれない」「担当者が辞めてプロジェクトが止まってしまった」——そういったご状況でも、ぜひご相談ください。

HarekaではHubSpotの導入支援にとどまらず、定着・活用フェーズのご支援も行っています。代表の岩間が全案件に一貫して担当する体制を取っており、推進体制の設計から現場への浸透策まで、一緒に考えます。

まずは30分の無料相談から。「何から手をつければいいかわからない」という段階でも、喜んでお話を伺います。

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