Salesforceが高い・複雑と感じたら考えるべき乗り換えの判断基準【CRMの専門家が解説】

Salesforceが高い・複雑と感じたら考えるべき乗り換えの判断基準【CRMの専門家が解説】

岩間悠一

岩間 悠一

元HubSpot Japan カスタマーサクセスマネージャー/Hareka合同会社 代表

200社以上のHubSpot導入を支援。現在はHubSpotコンサルタントとして独立。CRM導入から活用定着・AI連携まで一気通貫で支援しています。

「Salesforceのコストが重い」「複雑すぎて、自社では触れない」——そう感じている企業は少なくありません。

ただし、そう感じているからといって、即「乗り換えるべき」とは限りません。Salesforceは非常に強力なツールで、使いこなせている会社にとっては、今も最良の選択肢のひとつです。問題は、自社が「使いこなせている側」なのか、「持て余している側」なのかを、冷静に見極められていないことにあります。

私はHubSpotを専門として導入・移管支援を行っていますが、Salesforceにも実際に触れ、Salesforce Adminの資格も取得しています。「Salesforceに精通している」とまでは言いません。ただ、両方のツールに実際に触れてきたからこそ、どちらか一方に肩入れせずに語れることがあると考えています。

この記事では、乗り換えを検討すべき会社・そのまま使い続けるべき会社の判断基準を、できる限り公平にお伝えします。


「Salesforceが高い」の正体

まず、「高い」と感じる中身を分解してみましょう。実は「高さ」には2つの種類があります。

ライセンス費用と、繰り返される値上げ

1つ目は、目に見えるライセンス費用です。

Salesforceは単純なライセンス費用そのものが高めであることに加え、数年に一度、5〜10%近い値上げが行われてきました。1回の値上げなら耐えられても、長く使うほどこの値上げに何度も遭遇することになります。「導入したときの想定と、今払っている金額がまったく違う」——値上げの幅と頻度に苦しんでいる企業は、実際に多くいらっしゃいます。

見えない「維持・修正・運用コスト」

2つ目は、請求書には出てこないコストです。こちらの方が深刻なケースが多いです。

Salesforceは、UIが直感的とは言いづらく、設定の難易度が高いツールです。そのため、ちょっとした変更でも外部のベンダーに依頼せざるを得ないケースが多くなります。フローの変更や画面レイアウトの変更といった専門性の高い作業は、なおさら自社では手が出ません。

すると何が起きるか。修正のたびにベンダーへの費用が発生します。しかも、依頼してもすぐには対応してもらえず、時間もかかります。「項目をひとつ足したいだけなのに、見積もりと納期待ちが発生する」という状態です。

つまり、ライセンス費用の他に「維持・修正・運用のコスト」が重くのしかかっている——これが「Salesforceが高い」と感じることの、もうひとつの正体です。


「Salesforceが複雑すぎる」の正体

次に、「複雑さ」の中身です。これも2つに分けられます。

複雑に設定されすぎている状態

Salesforceを導入する際は、導入支援会社をつけて構築まで依頼するケースがほとんどです。自社だけで構築したという話は、ほぼ聞いたことがありません。

ここで重要なのは、Salesforceが「何でもできる」非常に強力なツールだということです。何でもできるからこそ、導入支援のベンダーは、利用する会社の要望を細かく実現してくれます。権限の設定、画面の設定、業務の流れの自動化、レポート、データの構造——あらゆる部分が、要望を実現するために細かく作り込まれていきます。

これ自体は素晴らしいことです。ただしその裏返しとして、利用する会社自身が、その全貌を理解するのは非常に難しくなります。「少し直したいだけ」なのに、絡み合った設定のせいで大きな部分に手を入れなければならない——そんな事態が起こります。

導入支援の段階で複雑に絡み合った構造を作り上げてしまい、その後誰も全体を把握できていない。こうしたケースを、私は何度も見てきました。

そもそも設定画面が難しい

もうひとつの複雑さは、Salesforceというツールそのものの性質です。

「何でもできる」とは、言い換えれば「選択肢が大量にある」ということです。大量の選択肢の中から「自社にとって何をどう選べば最も効率的か」を見つけるのも、それを実際に設定するのも、簡単なことではありません。

正直な経験談をお話しします。私はHubSpotを約3年半使い込んだ後に、Salesforce Adminの資格を取得しました。CRMの設定には自信がある方だと思っていましたが、Salesforceを触り始めた当初は、まったくわかりませんでした。資格の勉強と練習を積んだ今でも、「完全に自信を持って設定できます」とは言い切れないほど、専門性が高い世界です。

CRMを仕事にしている人間ですらそうなのですから、通常業務のかたわらでSalesforceを管理する担当者の方が「難しい」と感じるのは、当然のことです。ツールが悪いのでも、担当者の能力が低いのでもありません。それだけ専門性が求められるツールだ、ということです。


乗り換えを「検討すべき会社」

では、どんな会社が乗り換えを検討すべきなのでしょうか。私は大きく2つのパターンがあると考えています。

1. コスト・維持修正費が高いと感じている会社

ライセンス費用が高い、維持・修正のコストが高い——そう感じている会社は、一度、全面的に検討してみてよいと思います。

特に注目していただきたいのが、「複雑な設定が入っているのに、ほとんど使い切れていない」会社です。

導入時に作り込んだ細かい権限設定、自動化、レポート——それらを、今どれだけ使っているでしょうか。結局、営業の担当者が顧客情報と商談を記録するだけの「シンプルな使い方」しかしていないなら、不要な設定と不要な金額を払い続けている可能性が高いです。シンプルにしか使わないのであれば、もっとシンプルで安価なツールで十分に代替できるかもしれません。

2. 現場がSalesforceを使ってくれない会社

もうひとつが、現場がSalesforceを使ってくれない会社です。入力されない、積極的に運用されない、現場からの反発が大きい——こうした状態にあるなら、乗り換えを検討する価値があります。

これは、IT部門と現場の乖離に近い問題です。IT部門が経営者の意図をしっかり汲み取って、複雑で「良い」Salesforce設定を作り上げたとしても、そこに現場の意思が反映されていなければ、現場は入力してくれません。設計としては正しいのに使われない——このケースを、私は実際に何度も見てきました。

Salesforceが「管理のためのツール」に寄りすぎてしまうと、管理する側にとっては便利でも、現場にとっては「入力させられるだけのツール」になります。それ自体が悪いわけではないのですが、結果として現場の反感を生みやすい構造です。

そして、この状態を放置すると何が起きるか。現場が勝手に別のツール——たとえばkintoneのようなツールやExcel——を独自に使い始めます。会社としては高いツール費用を払っているのに、実際のデータはそちらに溜まっていく。これは本末転倒であり、経営にとって最も避けたい状況です。


そのまま「使い続けるべき会社」

一方で、乗り換えるべきではない会社もはっきりしています。Salesforceの複雑さを、しっかり使いこなせている会社です。

たとえば、次のような状態です。

  • 部門・役職・エリアごとに「誰がどの機能・どのデータを使えるか」を細かく柔軟に制御している(大企業に多い、細かい権限管理を実際に活用できている)
  • 部門ごとに見える画面を出し分けるなど、Salesforceならではの細かい設定を使いこなせている
  • Salesforceのレポートを使いこなし、経営の重要な判断材料として機能している
  • 複雑なデータ構造を、自社で理解しながら運用できている

こうした使い方ができているなら、その複雑さはコストではなく資産です。他のツールに移すことで、むしろ失うものの方が大きいかもしれません。

そして、最も重要な条件がひとつあります。「現場もSalesforceを理解していて、かつ好意的に捉えて使いこなせている」ことです。

管理側だけが満足しているのではなく、現場も「このツールは自分たちの役に立っている」と前向きに使えている。この状態にある会社は、Salesforceの良さを最大限活かせています。迷わず使い続けてよいと思います。


乗り換えを検討する会社が、最初にやるべきこと

「うちは検討すべき側かもしれない」と感じた方に、最初のステップを3つご紹介します。いきなり乗り換えを決める必要はありません。まずは判断材料を集めることです。

1. 他のCRMの見積もりを取る

まずは、他のCRM会社から見積もりを取ってみてください。営業担当に「今こういう使い方をしていて、これが必要」と要件を伝えれば、見積もりを出してくれます。

大事なのは、「乗り換えたら実際にコストが下がるのか」を具体的な数字で確認することです。感覚で「高い気がする」ではなく、「年間でいくら差が出るのか」がわかれば、判断の精度は大きく上がります。

2. AIを活用して現状を分析する

AIが発達した今、自社のSalesforceにどんな設定が入っているかを棚卸しできれば、その情報をAIに読み込ませて「他のCRMで同じことが実現できるか」「どれだけコスト削減できそうか」を調査することができます。数年前には考えられなかった、コストをかけない検討方法です。

ただし、注意点があります。ここまで述べてきた通り、Salesforceの構成は複雑で、そもそも棚卸し自体が難しいことが多いのです。全容を把握できないまま一部の情報だけで判断すると、移行後に「この機能が漏れていた」という事態になりかねません。

3. 専門家に現状分析を依頼する

乗り換えを本格的に検討するなら、一度専門家に現状分析を依頼するのも有効です。

見てもらうべきポイントは、自社のCRMの現実的な分析と、今の業務の理解、そして**「業務の実態」と「Salesforceの設定・ライセンスの実態」に乖離がないか**です。実際の業務はシンプルなのに、設定とライセンスだけが過剰——この乖離こそが、無駄なコストの正体だからです。

分析の結果、「Salesforceのままがいい」となれば、自信を持って残ればいい。「乗り換えればコストカットできる」となれば、進めればいい。どちらの結論でも、事実に基づいて判断できたことに価値があります。


まとめ

Salesforceは強力なツールであり、使いこなせている会社にとっては最良の選択肢です。細かい権限管理、画面の出し分け、経営判断につながるレポート——これらを管理側と現場の両方が理解し、前向きに使えているなら、使い続けるべきです。

一方で、複雑さを持て余し、使い切れないまま高いコストを払い続けている会社や、現場に使われず別のツールにデータが逃げてしまっている会社も、確実に存在します。

大切なのは、「自社が今どちらなのか」を冷静に見極めることです。乗り換えありきでも、現状維持ありきでもなく、事実に基づいて判断する。そのために、他社の見積もり・AIによる分析・専門家の診断といった手段を活用していただければと思います。


よくある質問

Q. Salesforceが高いと感じたら、乗り換えるべきですか?

A. 一概には言えません。細かい権限管理やレポートなど、Salesforceの複雑な機能を実際に使いこなせているなら、そのコストには価値があります。一方、シンプルな使い方しかしていないのに高いライセンス費用と維持・修正コストを払い続けているなら、乗り換えを検討する価値があります。まずは「使いこなせているか」を確認してください。

Q. Salesforceをそのまま使い続けるべき会社は、どんな会社ですか?

A. 細かい権限設定・部門ごとの画面の出し分け・複雑なレポートやデータ構造を、管理側と現場の両方が理解して運用できている会社です。特に、現場がSalesforceを好意的に捉えて前向きに使いこなせているなら、Salesforceの良さを最大限活かせている状態であり、使い続けるべきです。

Q. 乗り換えを検討するとき、最初に何をすべきですか?

A. 3つあります。他のCRM会社から見積もりを取り、コストが実際に下がるかを数字で確認すること。自社のSalesforceの設定情報をAIに読み込ませて、他のCRMで代替できるかを分析すること。そして、専門家に「業務の実態」と「Salesforceの設定・ライセンスの実態」に乖離がないかを診断してもらうことです。


Salesforceからの乗り換え・現状診断のご相談はHarekaへ

Harekaでは、SalesforceからHubSpotへの移管支援と、その前段階となる現状診断を行っています。「乗り換えるべきか、残るべきか」の段階からご相談いただけます。

代表の岩間が全案件を一貫して担当する体制のため、診断から移行、その後の定着まで、担当変更なく同じ人間が伴走します。HubSpot Japanのカスタマーサクセスマネージャーとして200社以上を支援した経験と、Salesforceに実際に触れてきた経験の両方をもとに、「Salesforceのままがいい」という結論も含めて、正直にお伝えすることを大切にしています。

「まだ乗り換えると決めたわけではない」という段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。

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