Salesforce移行で入力作業を12分の1に――AI活用のCRM再設計
🎯 数十万件のデータを欠損ゼロで移行
- 業種
- ソフトウェア開発・SaaS
- 従業員規模
- 従業員約100名
- 移行前ツール
- Salesforce Sales Cloud Enterprise
- 移行後ツール
- HubSpot Sales Hub Enterprise ほか
- 支援期間
- 約4ヶ月(要件定義〜カットオーバー)
- 一番の成果
- 数十万件のデータを欠損ゼロで移行
【導入事例】Salesforce から HubSpot へ ― 移行と構造再設計を、同じ期間内に
通常なら「移行するだけ」で終わる4ヶ月の中に、売上管理の構造再設計と自動化まで詰め込む。AIを開発パートナーとしたことで実現した、12回のクリック作業をワンクリックに自動化したCRM移行
アプリ開発を手がける企業さま。Salesforceの契約満了に伴う移行プロジェクトにおいて、Harekaが要件定義からデータ移行、売上管理システムの再設計、カットオーバーまでを一貫してリードしました。
数値ハイライト
| 指標 | 成果 |
|---|---|
| 入力作業 | 12回のクリック作業をワンクリックに自動化 |
| ライセンスコスト | 複数ライセンス費用が不要になり、年間で大きく改善 |
| 移行データ量 | 数十万件規模(欠損ゼロ) |
| 数値検証 | 売上金額がSalesforceと完全一致 |
お客様プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | アプリ開発・ソフトウェア開発 |
| 規模 | 従業員約100名(CRM利用者20〜30名規模) |
| 移行前ツール | Salesforce Sales Cloud Enterprise |
| 移行後ツール | HubSpot Sales Hub Enterprise ほか |
課題(Before)
ご相談をいただいた時点で、お客様は大きく4つの課題を抱えていらっしゃいました。
- 構築時につくり込まれた仕組みが、現場の足かせになっていた ― Salesforce導入時に構築パートナーが設計した仕組みをそのまま使い続けており、契約1件を登録するだけで大量の手入力が発生。受注時に内容が変わると、そのすべてを修正する必要があった。「システムに業務を合わせる」状態を、現場の努力でカバーし続けていた。
- 売上予測の精度が上がらない ― 売上の「読み」の精度を上げたいが、現行の構造ではそれが難しい状態だった。
- 契約満了という動かせない期限 ― Salesforceの契約満了が決まっており、それまでに移行を完了させる必要があった。
- CRMを「会社として使えるもの」に再整備したい ― 単に引っ越すのではなく、この機会にCRMを整理し、運用をスリム化したいという経営判断があった。
このプロジェクトの特徴 ― 「移行するだけ」で終わらせなかった
CRM移行のプロジェクトは、限られた期間の中で膨大な作業が発生します。データの棚卸し、移行設計、実装、検証、そしてカットオーバー。通常であれば、この「引っ越し」を完了させるだけで期間を使い切ってしまいます。
しかし今回、お客様が本当に解決したかったのは、構築時につくり込まれた非効率な入力の仕組みという現場の負担でした。移行だけで終われば、その仕組みごとHubSpotに持ち越されます。
そこで本プロジェクトでは、移行と並行して売上管理の構造そのものを作り直すという選択をしました。これを可能にしたのが、後述するAIの活用です。
支援内容(アプローチ)
1. 要件定義 ― 「何を再現し、何を作り直すか」を決める
複数回のヒアリングを実施し、要件定義書を策定。移行対象、パイプライン設計、ワークフロー、レポート、外部連携、責任分界までを文書化しました。
ここで提案した基本方針が「現行の運用は原則そのまま踏襲する。ただし商品管理・売上管理の領域だけは作り直す」というものです。
移行と改善を全面的に同時展開すると、どちらも中途半端になります。確実に再現すべき部分と、この機会に構造から作り直すべき部分を切り分ける。この判断が、プロジェクト全体の成否を分けました。
2. AIを開発パートナーとした進め方 ― 本プロジェクトを可能にした要素
本プロジェクトの実現を支えたのが、各工程でのAI活用です。
棚卸し・分析の工程
移行元には長年の運用で蓄積された膨大なオブジェクトと項目がありました。何がどれだけ使われているのか、どの項目が実質的に機能していないのか。この分析にAIを活用することで、通常であれば数週間かかる棚卸しを大幅に短縮しました。
移行設計の工程
移行元と移行先の構造の違いをどう吸収するか。項目のマッピング、変換ルールの設計にもAIを活用し、設計のたたき台を高速に作成・検証するサイクルを回しました。
実装の工程
市販の移行ツールを不採用とし、APIを直接使うプログラムでの移行を選択しました。この移行スクリプト群の開発をAIとともに進めることで、通常であれば複数人・長期間を要する実装を、大幅に短い期間で完了させています。
検証の工程
移行後の全件検証、数値の突合もAIを活用して実施。人手では現実的でない量の確認作業を、確実に実行しました。
この効率化によって生まれた時間を、そのまま「売上管理の構造再設計」に充てることができました。AIの活用は、単に作業を速くするためではなく、「同じ期間の中でより本質的な課題を解決するため」に使っています。
3. データ移行 ― 欠損ゼロと数値の完全一致
すべての処理は「実行前の確認 → 小規模テスト → 本番全件 → 全件検証」というプロセスで実施。何度実行しても結果が壊れない設計にすることで、やり直しが必要になっても安全に対応できる状態をつくりました。
検証の基準は、「だいたい移せた」ではなく売上金額がSalesforce側と1円単位で一致すること。会計年度の受注金額も確定売上も、移行後に完全一致することを確認しています。数字が一致していると示せることで、お客様は安心して切り替えを判断できます。
なお、複数の形式に分かれて蓄積されていたメール履歴は、単純に移すと重複が発生する構造でした。優先順位を設計したうえで、重複ゼロかつ情報の欠落ゼロを実現しています。
4. 売上管理の再設計 ― 「12回のクリックをワンクリックに」の中身
最大の山場が、売上管理の構造をどう作り直すかでした。
移行前は、月次の継続売上を取引(商談)のパイプライン上で管理する構造でしたが、実機で検証した結果、この構造ではHubSpotのレポートで必要な集計ができないことが判明しました。
そこで提案したのが、売上を専用のオブジェクトとして独立させる構造への転換です。3万件超の既存の売上データを新しい構造へ移行し、失敗ゼロ・金額の欠落ゼロで、親となる取引との紐付けまで全件解決しました。
設計の判断は、机上ではなく実機検証にもとづいて行う。 これは移行プロジェクトにおいて非常に重要な姿勢だと考えています。
5. 自動化の実装 ― 大量の手入力が「見積1件」に
新しい構造の上に、業務を自動化する仕組みを実装しました。
- 見積の入力をトリガーに、売上レコードを自動生成
- 受注時には、翌年の更新取引・更新見積・更新売上までを自動生成
これが「12回のクリック作業をワンクリックに」の中身です。 従来は契約1件の登録に大量の手入力が必要で、受注時に内容がずれれば、そのすべてを修正する必要がありました。新しい構造では、見積を1件入力するだけで売上レコードが自動生成され、更新年度分まで自動で作られます。手作業として残るのは、最初の見積入力のみ。修正作業もほぼ発生しません。
6. レポート・業務ガードレールの構築
全社ダッシュボードを含むレポート群を新規に構築。移行元のレポートをそのまま移すのではなく、新しい構造に合わせて再設計しました。
あわせて、失注時の直前ステージの自動記録、紐付けが外れた売上データの日次検知、見積の必須チェックとステージの差し戻しなど、運用を守るための自動化も実装しています。
成果(After)
- 12回のクリック作業をワンクリックに自動化 ― 契約1件ごとの大量の手入力と受注時の修正作業が、見積1件の入力で完結する構造に。
- ライセンスコストを削減 ― SalesforceからHubSpotへの移行により、複数ライセンスの費用が不要になり、年間のランニングコストが大きく改善。
- 売上予測が見込み段階から見えるように ― 見積の入力だけで初年度と更新年度の売上予測が自動生成され、早い段階から予測が把握できる状態に。
- 数十万件のデータを欠損ゼロで移行 ― 売上金額はSalesforceと完全一致することを検証済み。
- 期限内にカットオーバーを完了 ― 契約満了という動かせない期限に対し、移行と構造再設計の両方を完了。
まとめ ― なぜHarekaだったのか
このプロジェクトが実現できたのは、4つの理解が揃っていたからだと考えています。
1. Salesforceへの深い理解
移行元の構造を正確に把握できなければ、何を再現し何を作り直すべきかの判断はできません。オブジェクト構成、データの持ち方、運用の実態まで踏み込んで理解することが出発点でした。
2. HubSpotへの深い理解
移行先で「何ができて、何ができないか」を実機レベルで把握していたからこそ、既存の売上管理構造がHubSpot上では機能しないことを早期に特定し、代替構造を設計できました。机上の知識だけでは、この判断はできません。
3. 業務への理解
構築時の仕組みに起因する入力負担が現場にとってどれだけ重いものか、売上予測の精度が経営にとって何を意味するか。業務そのものを理解しているからこそ、技術的に正しいだけでなく、現場が本当に楽になる設計にたどり着けました。
4. AI開発の強み
そして最大の要素が、AIを開発パートナーとして使いこなせることです。棚卸し・設計・実装・検証の各工程でAIを活用することで、通常なら「移行するだけ」で終わる期間の中に、構造の再設計と自動化まで詰め込むことができました。
同じ期間・同じ予算で、どこまで実現できるか。 AI活用の本当の価値は、作業を速くすることではなく、本質的な課題を解決する余力を生み出すことにあると考えています。