HubSpotの導入を検討するとき、一番気になるのは「結局、何ができて、何ができないのか」ではないでしょうか。
導入を勧める側の説明は、どうしても「できること」に偏りがちです。しかし、CRM選びで本当に大事なのは「できないこと」を先に知っておくことです。導入後に「思っていたのと違った」となれば、費用も時間も、そして現場の信頼も失われます。
私はHubSpot Japanのカスタマーサクセスマネージャーとして200社以上のHubSpot活用を支援してきました。HubSpotを専門とする立場ですが、だからこそこの記事では、HubSpotでできること・できないことを、隠さず正直にお伝えします。
HubSpotでできること:製品群でわかる全体像
まず全体像からです。HubSpotは、ひとつの顧客データベースの上に、複数の製品(Hub)が乗っている構成になっています。それぞれの製品で何ができるかを見れば、HubSpotの守備範囲がわかります。
- Marketing Hub:マーケティングオートメーション(MA)の製品です。メール配信、問い合わせフォームの作成、見込み客(リード)の管理・育成など、マーケティング活動全般を担います
- Sales Hub:営業支援(SFA)の製品です。商談の管理、パイプライン(商談の進捗状況の一覧)、営業活動の記録など、営業の仕事を支えます
- Service Hub:問い合わせ対応・チケット管理の製品です。カスタマーサポート業務を管理します
- Content Hub:ウェブサイトの制作・管理(CMS)ができる製品です
- Data Hub:データの管理・整備を担う製品です
- Revenue Hub:請求・見積もり・決済まわりを扱う製品です
このうち、日本で特に実績が豊富なのは、Marketing・Sales・Service・Contentの4つのHubです。マーケティング・営業・カスタマーサービス・ウェブサイトという、ビジネスサイドの中心業務はこの4つでカバーできます。一方、Revenue Hubをはじめとする請求・決済系は、日本ではまだ実績が少ないのが実情です。この点は正直にお伝えしておきます。
ポイントは、これらすべてがひとつの顧客データベースの上で動くことです。マーケティングが獲得した見込み客の情報を、営業がそのまま引き継ぎ、契約後はサポートが同じ画面で対応履歴を見られる。部門をまたいで顧客情報が一気通貫でつながる——これがHubSpotの最大の価値です。
意外と知られていない強み:AI・チャット操作との連携
もうひとつ、検討中の方にあまり知られていない強みがあります。HubSpotはAIとの連携が非常に強いのです。
具体的にどういうことか。HubSpotの管理画面を開かなくても、AIとのチャット画面から「先月の商談一覧を出して」「この会社の担当者情報を更新して」といった形で、HubSpotのデータの読み込み・書き込み・エクスポートができます。しかも、こうしたAI連携は、追加のプランなしでできることが多いのです。
これは、今の時代のCRM選びで見逃せないポイントです。CRMが使われなくなる大きな原因は「入力や操作が面倒」なことですが、チャットから話しかけるだけで操作できるなら、そのハードルは大きく下がります。管理画面の使い方を覚えなくても、聞けば答えてくれる——「画面に頼らない操作」という、これからのCRMに求められる領域を、HubSpotは非常に得意としています。
また、HubSpot側から他のシステムへデータを自動で受け渡す連携(Webhookと呼ばれる仕組み)も可能で、周辺ツールとの組み合わせの幅も広いです。ビジネスサイドのCRMとして、この連携の強さは大きな魅力です。
HubSpotが「できないこと・苦手なこと」
ここからが、この記事の本題です。HubSpotの苦手分野を、Salesforceと比較しながら正直にお伝えします。
1. 非常に細かい権限管理
Salesforceは、「誰が・どのデータを・どこまで見られるか、編集できるか」を、ものすごく細かく設定できます。部門・役職・エリアごとに何百通りものパターンで、柔軟に権限を管理できるのがSalesforceの強みです。
HubSpotは、そこまで細かい権限管理はできません。基本的な権限設定はもちろんありますが、「何百通りもある権限パターンへの対応」が必要なら、HubSpotでは実現できない——これははっきり申し上げておきます。大企業で厳密な情報統制が必須の場合は、この点を必ず確認してください。
2. 画面の細かいコントロール(出し分け・入力制御)
権限と似た話ですが、画面まわりも同様です。
「この役職の人にはこの画面を見せるが、この人には見せない」といった細かい画面の出し分け。「この条件のときは、この項目にこの形式でしか入力させない」といった入力の制御。こうした「誰に何を見せるか・何を書き込ませるか・書き込ませないか」という細かい管理は、Salesforceほど細かくはできません。
何百通りもの画面の見せ方への対応が必須なら、HubSpotではなく別のツールを検討したほうがよいでしょう。
3. バックオフィス系(販売管理・原価管理など)
販売管理や原価管理といった、バックオフィスに近い領域も、HubSpotの得意分野ではありません。
正確に言うと、「できない」わけではありません。Data Hubのカスタムコード機能(プログラムを組み込める仕組み)を使えば、柔軟に作ることはできますし、実際に実現は可能です。ただし、それ専用のツールのように「すぐ簡単に実現できる」わけではない、ということです。
なお、これはHubSpotに限った話ではなく、Salesforceも同様です。バックオフィス系は、どのCRMにとっても本来は専門ツールの領域です。一般的には、販売管理・原価管理は専門のツールに任せ、CRMと連携させる方式が取られます。
「HubSpotでできると思われがちだけど、向いていない」使い方
苦手分野に関連して、ひとつ注意しておきたい使い方があります。前述のバックオフィス系(販売管理・原価管理など)を、自社だけで開発・運用しようとすることです。
HubSpotは年々柔軟になってきており、実現自体はできます。私自身、実際にこの領域を構築したことがあります。しかし、その経験があるからこそ言えるのですが、これを自社で構築して、自社だけで運用し続けるのは、正直かなり厳しいです。作り込んだ仕組みは、メンテナンスできる人がいなくなった瞬間にブラックボックスになります。
どうしてもHubSpot内で実現したい場合は、パートナーによるカスタマイズを前提に考えてください。
検討する人へのアドバイス:どう判断すればいいか
ここまでの内容を、判断の軸として整理します。
できること:マーケティング・営業・カスタマーサービス・ウェブサイトといった、ビジネスサイドの管理は基本的に全部できます。さらに、AI時代に求められる「チャット画面からのCRM操作」もできる。ビジネスサイドのCRMとして、HubSpotは非常に優秀です。
工夫が必要なこと:バックオフィス系(販売管理・原価管理など)は、少しカスタマイズが必要です。簡単にやりたいなら、専門ツールを導入してHubSpotと連携させるのがよいでしょう。すべてHubSpot内でまとめたいなら、パートナーに依頼すれば対応可能です。
できないこと:非常に細かい権限管理と、画面の出し分けです。これが必須の会社は、HubSpotでは実現できないため、別のツールを検討したほうがよいです。
逆に言えば、そこまで複雑な権限・画面管理は不要で、ビジネスサイドをシンプルに、スピーディに回したい——そういう会社にとって、HubSpotは非常に良い選択肢です。
まとめ
HubSpotは、マーケティング・営業・サービスというビジネスサイドのCRMとして非常に優秀です。ひとつの顧客データベースで部門をまたいで情報がつながり、特にAI・チャット連携の強さは、今の時代の大きな武器になります。
一方で、何百通りにも及ぶ細かい権限管理・画面の出し分け・バックオフィス系の業務は苦手です。得意・不得意ははっきりしています。
大事なのは、この「得意・不得意」を導入前に理解し、自社に必要なものと照らし合わせて判断することです。それが、後悔しないCRM選びにつながります。
よくある質問
Q. HubSpotでは何ができますか?
A. マーケティング(MA)、営業支援(SFA)、カスタマーサービス、ウェブサイト管理など、ビジネスサイドの管理は基本的に全部できます。すべてがひとつの顧客データベース上で動くため、部門をまたいで顧客情報がつながるのが強みです。また、AIとのチャット画面からデータの読み書きができるなど、AI連携も得意としています。
Q. HubSpotが苦手なことは何ですか?
A. 大きく3つです。何百通りものパターンが必要になるような非常に細かい権限管理、役職や条件に応じた細かい画面の出し分け・入力制御、そして販売管理・原価管理などのバックオフィス系業務です。細かい権限・画面管理が必須の場合は、別のツールを検討したほうがよいでしょう。
Q. バックオフィス業務(販売管理・原価管理など)もHubSpotでやるべきですか?
A. 簡単にやりたいなら、専門ツールを導入してHubSpotと連携させる方式がおすすめです。どうしてもすべてHubSpot内でまとめたい場合は実現可能ですが、自社だけでの構築・運用は難しいため、パートナーによるカスタマイズを前提に考えてください。
HubSpotの導入検討・活用のご相談はHarekaへ
Harekaでは、HubSpotの導入支援・移管支援を行っています。この記事でお伝えしたとおり、HubSpotには得意・不得意があります。だからこそ、「御社のやりたいことがHubSpotでできるのか・できないのか」を、導入を決める前の段階から正直にお伝えすることを大切にしています。
代表の岩間が全案件を一貫して担当する体制のため、検討段階の相談から導入、その後の定着まで、担当変更なく同じ人間が伴走します。HubSpot Japanのカスタマーサクセスマネージャーとして200社以上を支援した経験をもとに、バックオフィス系のカスタマイズのような難易度の高い領域まで含めてご相談いただけます。
「HubSpotが自社に合うかどうか、まず知りたい」という段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。