2026年6月、HubSpotから「Agent CLI」というツールが(ベータ版として)リリースされました。一言でいうと、Claude CodeなどのAIエージェントからHubSpotを直接操作するための公式ツールです。
「AIでHubSpotを操作する」というと、すでにコネクタ連携を使っている方も多いと思います。違いをシンプルに言うと、こうです。
- コネクタ連携:チャット画面(Claude.aiなど)から、話しかけてHubSpotを操作する
- Agent CLI:ターミナルやVS Code(Claude Codeなど)から、AIエージェントにHubSpotの操作を委任する
つまり「どこからAIに頼むか」が違います。チャットで気軽に聞くのがコネクタ、開発者が使うような画面からまとまった処理を任せるのがAgent CLIです。
実際に自分のデモポータルで触ってみたので、何ができるのか・誰に向いているのかを紹介します。
Agent CLIとは
HubSpotが提供するAIエージェント向けのツールです。Claude Code、Claude Cowork、OpenAI Codexなどに接続して、CRMデータの処理・分析・一括操作をAIに委任できます。
アクセスできる範囲は、コンタクト・会社・取引・チケット・カスタムオブジェクト・ワークフロー・パイプライン・プロパティ・関連付け・アクティビティ履歴など。APIで触れる範囲はほぼカバーしています。
セットアップは数分で終わります。インストール後、ブラウザでHubSpotにログインするだけ。APIキーの発行や配布は不要で、操作できる範囲は「ログインしたユーザーのHubSpot権限」と完全に一致します。あわせてHubSpot公式の「スキル」(CRM検索・一括操作・データ品質管理など、AIにHubSpot業務の文脈を教えるナレッジ集)を追加すると、AIが「HubSpotの業務がわかるアシスタント」になります。
実際に使ってみる:一括更新のデモ
セットアップ後は、Claude Codeに日本語で話しかけるだけです。私のデモポータル(会社1,600社・取引1,000件のサンプルデータ入り)で、こう依頼してみました。
「東洋」で始まる会社のライフサイクルステージを一括でマーケティング認定リードに更新したい。まずプレビューして、実行前に必ず私の確認を取って。
すると、AIは対象100社を抽出したうえで、こう返してきました。
100社のうち67社は現在lead、33社はopportunityです。opportunityからMQLへの変更はステージの「後退」になります。どう進めますか?
- 100社すべて実行
- leadの67社のみ実行(後退になる33社は除外)
- キャンセル
ここが今回一番感心したポイントです。単に「実行しますか?」と聞くのではなく、HubSpotのライフサイクルステージの仕様(後退リスク)を踏まえた選択肢を提示してきたのです。人間のCRM管理者が確認するのと同じ観点を、AIが先回りして出してくる。
Agent CLIには「dry-run」(実行せずに変更内容をプレビューする機能)が組み込まれており、変更系の操作のログもローカルに監査記録として残ります。「AIに一括更新を任せるのは怖い」という感覚に対して、仕組みとして安全装置が用意されています。
私が思う使い分け:API・コネクタ・Agent CLI
同じポータルで3つの方法を試した上での、私なりの使い分けです。
API直接利用 → システムがわかる管理者・開発者向け
APIキーの発行・管理・ローテーションといった運用が必要で、明らかにアドミン向けです。システムを理解している人が、データ移行や外部システム連携、「毎回必ず同じロジックで実行したい」定型処理をコードで固定化する場面で使うものです。一般の従業員に渡すものではありません。
コネクタ連携 → 全社員向け。いちばん使ってもらいやすい
APIキーを渡さずに使ってもらえるのが、コネクタとAgent CLIの共通の良さです。その中でもコネクタはチャット画面での操作なので、圧倒的に使ってもらいやすい。「この条件の取引リストを出して」「この会社の履歴をまとめて」といった日常の「ちょっと知りたい」に、営業でもマーケでも誰でも使えます。
Agent CLI → CRMの更新・管理に責任を持つ人向け
ターミナルやVS Codeからの操作になるので、慣れない人には少しハードルがあるかもしれません。ただ、その分一括操作や大量処理に強い。
向いているのは、営業マネージャー、マーケティングチーム、あるいは「社内のCRM担当者とまではいかないけれど、CRMの更新・管理に責任を持っている人」です。展示会リードの一括更新、データクレンジング、定期的なリスト整備——こうした「まとまった件数を、安全に、確実に処理したい」場面で、dry-runと確認フローつきでAIに任せられるのは大きい。コネクタの書き込みは少件数向きなので、ここがAgent CLIの独壇場です。
注意点
- まだベータ版です。 本番ポータルへの導入は、検証環境での確認とセットで進めることをおすすめします。
- AIの権限=ユーザーの権限です。 スーパー管理者のアカウントで接続すれば、AIも削除やマージができてしまいます。導入前にユーザー権限の棚卸しをしておくことが、実質的な安全設計になります。
まとめ
HubSpot Agent CLIは、「AIにCRM業務を委任する」ための公式ルートとして、思った以上に実用的な作りになっていました。特にdry-runと確認フローの設計は、AIによる一括操作の心理的ハードルを大きく下げてくれます。
「どれか一つを選ぶ」のではなく、チャットで聞くのはコネクタ、一括処理はAgent CLI、基幹の自動化はAPIという使い分けを、社内の誰がどの業務を担うかに合わせて設計する。これがHubSpot×AI活用の導入ポイントだと考えています。
Harekaでは、HubSpot既存ユーザー向けにAI活用の導入支援を行っています。「自社ならどこから始めるべきか」を知りたい方は、お気軽にご相談ください。