HubSpot のワークフロー(自動化の仕組み)は本当に強力です。「フォームが送信されたら担当者に通知」「取引のステージが変わったらタスクを作成」——こうした処理を、プログラムを書かずに組めるのが売りです。
ただ、正直に言うと、作るのはそれなりに大変です。管理画面(UI)には独特のクセがあり、トリガーの設定、条件の組み方、アクションの並べ方など、慣れるまでは1本作るのにも時間がかかります。「自動化したいことは頭の中にあるのに、それを HubSpot の画面上でどう表現すればいいのか分からない」——ワークフロー初心者の方なら、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
そこで今回試したのが、発想の転換です。HubSpot の画面を開かずに、AI に日本語で「こういう自動化がほしい」と伝えるだけで、ワークフローがどこまで作れるのか。 いろいろなパターンで検証したので、その結果をまとめます。
仕組み:日本語の指示が、そのままワークフローになる
種明かしをすると、HubSpot には「API」という、プログラム経由で HubSpot を操作できる仕組みがあり、実はワークフローそのものも API 経由で作成できます。
とはいえ、API を直接扱うにはプログラミングの知識が必要です。そこで間に AI(今回は Claude を使いました)を挟みます。流れはこうです。
- 人間が AI に、日本語で要望を伝える(例:「取引のステージが受注に変わったら、関連するレコードをまとめて作成するワークフローがほしい」)
- AI がその要望を、API に送り込める「ワークフローの設計図」に変換する
- AI が API 経由で HubSpot に送信すると、ワークフローの一覧に完成品が現れる
つまり人間がやることは、やりたいことを日本語で説明するだけ。HubSpot の画面でトリガーやアクションをポチポチ設定する作業は発生しません。
「そんなにうまくいくの?」と思いますよね。結論から言うと、思った以上にうまくいく領域と、最後だけ人間の出番が残る領域がありました。順に紹介します。
うまくいった話:「プログラム入り」のワークフローまで日本語だけで完成した
まず驚いたのは、シンプルなワークフローどころか、かなり凝ったものまで日本語の指示だけで完成したことです。
HubSpot のワークフローには、標準のアクションだけでは実現できない処理を、独自のプログラム(カスタムコード)を埋め込んで実行する機能があります(利用にはプランの条件があります)。本来なら、プログラムが書けるエンジニアの領域です。
ところが AI に「レコードのステージが変わった瞬間に、関連するレコードを何十件もまとめて自動生成したい。件数が多くても途中で止まらないようにしてほしい」と日本語で伝えると、プログラム部分も含めた設計図を AI が丸ごと書き上げ、そのまま動く状態のワークフローが出来上がりました。管理画面は一度も触っていません。
しかも、こちらがプログラムの中身を理解している必要はありません。「何をしたいか」を具体的な日本語で伝えられれば、実装の細部は AI が埋めてくれます。修正も同じで、「この条件のときは除外して」と伝えれば数分で作り直されます。UIの操作に慣れる必要がない、というのはワークフロー初心者にとって想像以上に大きいと感じました。
ただし、これがきれいに成立するのは、ワークフローが**「一本道」であること**が条件でした。トリガーが発動したら、上から順にアクションが流れていくシンプルな構造。この形であれば、中身がどれだけ凝っていても、日本語だけで完成品まで到達できました。
うまくいかなかった話:「分岐」だけは最後に画面の出番が残った
では、何ができなかったのか。それが分岐のあるワークフローでした。
ワークフローの途中に「もし〇〇なら右へ、そうでなければ左へ」という枝分かれが入るタイプがあります。条件によって処理を出し分ける、実務ではよく使う構造です。
これも同じように日本語で依頼したところ、ワークフローの骨格はちゃんと出来上がりました。分岐も、分岐の先のアクションも、見た目上はすべて配置されています。
ところが、動かしてみると一部がうまく動かない。調べてみると、分岐の先にあるアクション同士の「つながり」が正しく認識されていなかったのです。人間に例えると、「Aさんの作業が終わったら、その結果をBさんに渡してください」という指示のうち、「その結果を」の部分が宙ぶらりんになっている状態。部品は全部揃っているのに、部品同士をつなぐ配線が一部通っていない、と言ってもいいかもしれません。
AI に設計図を何度も書き直してもらいましたが、API 経由ではどうしてもこの配線が通らない。最終的にどうしたかというと——HubSpot の管理画面を開いて、問題の箇所だけ手で直しました。画面上でつなぎ直すと、あっさり動きました。
ここから得た結論はこうです。
一本道のワークフローなら、日本語の指示だけで完成品まで作れる。分岐が入るものは、日本語で8割作って、最後の仕上げだけ画面でやる。
「100%画面いらず」とは言えませんでしたが、8割を日本語で済ませられるだけでも、UIと格闘する時間は劇的に減ります。しかも手直しは「配線をつなぐ」一点だけなので、ゼロから画面で組むのとは比べものになりません。
大事な注意:日本語で作れても、「確認」は人間の仕事
ここまで読むと「もう全部AIに任せればいいのでは」と思われるかもしれません。ですが、検証の中で痛感したことがあります。作るのは簡単になっても、自動化の落とし穴そのものは消えないのです。いくつか例を挙げます。
「正常に完了」が信用できないことがある。 カスタムコード入りのワークフローでは、実行履歴に「成功」と表示されていても、実は中の処理が失敗していた、ということが起こり得ます。「本当に処理されたかを自分でチェックする仕組みも入れて」と AI に指示しておくことが大切です。
処理には制限時間がある。 ワークフロー内の処理には時間制限があり、大量のレコードを扱うと途中で打ち切られることがあります。処理対象が多くなるパターンを、必ずテストで試しておく必要があります。
自動化同士の無限ループ。 「レコードが作られたら別のレコードを自動で作る」仕組みが複数あると、自動で作られたレコードがまた別の自動化を呼び出して……と連鎖が止まらなくなる恐れがあります。自動作成されたレコードに目印を付けて除外する、といった構造的な対策が要ります。
タイミングのズレ。 複数のワークフローが連動していると、前の処理が終わる前に次が動き出し、空欄のままレコードができてしまうことがあります。
面白いのは、こうした対策自体も日本語で指示すれば AI が組み込んでくれることです。ただし、「どんな落とし穴がありそうか」を想像して指示に含めること、そして出来上がったワークフローを変なパターンでわざと動かして、壊れないか確かめること——ここは人間の仕事として残ります。作るのが速くなったぶん、テストと確認に時間を使う。それが健全なバランスだと感じました。
まとめ:自然言語だけでどこまでいけるのか
- 一本道のワークフローなら、カスタムコード入りの凝ったものでも、日本語の指示だけで完成品まで作れる
- 分岐が入るものは日本語で8割まで。最後の配線だけ画面での手直しが必要(少なくとも現時点の筆者の検証範囲では)
- UIの操作に慣れていなくても、「何をしたいか」を具体的な日本語にできれば、ワークフローは組める時代になっている
- ただし、落とし穴の想定とテスト・確認は引き続き人間の仕事。「作る」より「確かめる」に時間を使うのがコツ
ワークフローの画面とにらめっこして疲れている方、「やりたいことはあるのに形にできない」と感じている方は、一度この方法を試してみる価値があると思います。
Harekaでは、HubSpotの活用支援を行っています。ワークフローによる自動化の設計や、AI連携のご相談も含めて、お気軽にお問い合わせください。