ZendeskからHubSpotへ移行|難所と見送るべきケース

ZendeskからHubSpotへ移行|難所と見送るべきケース

岩間悠一

岩間 悠一

元HubSpot Japan カスタマーサクセスマネージャー/Hareka合同会社 代表

200社以上のHubSpot導入を支援。現在はHubSpotコンサルタントとして独立。CRM導入から活用定着・AI連携まで一気通貫で支援しています。

ZendeskからHubSpotへの移行相談で、最も多いのは次のパターンです。

Zendeskをシンプルに使っていた会社が、マーケティングや営業をHubSpotに移行するタイミングに合わせて、サポートも同時にZendeskから載せ替える。

つまり、Zendeskに不満があって離れるわけではありません。営業・マーケ・サポートを一つにまとめたいという動機が先にあり、その流れでサポートの置き場所も見直される。これが実態です。

だからこの検討は、「ZendeskとHubSpot、どちらが優れたサポートツールか」という問いにはなりません。問うべきは、自社がZendeskで組んでいる設定が、統合の目的に対して重いのか軽いのかです。

この記事では、移行の実際の難所と、移行すべきケース・見送るべきケースを整理します。


1. 移行の実際:マクロは難しくない、添付ファイルが大変

心配されやすいのは「作り込んできたマクロ(定型文の挿入やステータス変更・タグ付け・担当者変更などをまとめて実行する機能)はどうなるのか」です。

マクロは自動で移すものではなく、HubSpot側で作り直します。 定型文はスニペットやテンプレートに、アクションはワークフロー等に置き換える形です。数が少なくシンプルなら難しくありません。数が多い・アクションが複雑な場合は、先に棚卸しして、使われているものだけを作り直してください。

本当に手間がかかるのは、添付ファイルです。

Zendesk側では、お客様からの問い合わせにスクリーンショットなどの添付ファイルが大量に含まれているケースが多くあります。「画面がこうなっています」という画像が、1件のチケットに何枚も付いている——サポートの現場では、ごく普通の光景です。

チケット本文の移行は、移行手段を適切に選べば問題ありません。ただし過去チケットはHubSpot上でチケットレコードとその履歴として残り、Zendeskでの見え方とまったく同じにはなりません。移行後の見え方は、テスト移行で現場に確認してもらってください。

問題は、その添付ファイルをHubSpot側に載せ替える作業に工数がかかることです。添付ファイルはファイルそのものを運び、元のチケットとの紐付けを保ったまま置き直す必要があります。件数が増えるほど、ここがデータ移行の工数を決めます。

移行手段は、テスト移行で選ぶ

移行手段には、既製の移行ツール、HubSpot標準のインポート、自社スクリプトといった選択肢があります。ツールによって本文・添付の移行品質には差があります。 必ず少量のテスト移行で確認してから選んでください。

筆者の案件では複数のツールをテストし、他のツールでは本文と添付がうまく移行できなかった一方、「Help Desk Migration」では問題なく移行できたため採用しました。あくまでテストした範囲のツールの中での判断です。

約3ヶ月の中身

筆者が担当した案件では、チケット約5万件の移行に約3ヶ月を要しました。

この3ヶ月はツールを回していた時間ではなく、設計・テスト移行・検証、そしてHubSpotを使う社内チームへの研修まで含めた期間です。ツールの実行自体は短期間で終わることが多く、プロジェクトの期間とは別物です。実感として時間がかかったのは、データを移す作業よりも、現場がHubSpotで対応できるようになるまでの研修でした。期間の見積もりには研修期間も入れてください。

そのうえでデータ移行の工数を見積もるとき、チケット件数だけを見るのは危険です。「添付ファイルがどれくらいあるか」を先に確認しておいてください。 同じ5万件でも、添付がほとんどないアカウントと、1件あたり数枚の画像が付いているアカウントでは、作業の重さがまったく違います。


2. ヘルプセンター記事も移行対象になる

Zendeskでヘルプセンターを公開しているなら、その記事も移行対象です。公式ドキュメント上は、HubSpotのナレッジベースにZendeskなどから記事を取り込む機能があります。ただし、取り込めることとそのまま公開できることは別です。

  • 記事URLが変わる。 リダイレクト設定をしないと、検索流入や、過去の返信メールに貼ったリンクが切れます
  • 画像、カテゴリ階層、多言語記事は確認・手直しが発生しやすい。 公式ドキュメント上も、取り込んだ記事はナレッジベースの主言語に追加されるとされています
  • 移行前に記事数と、よく見られている記事を把握する。 確認の優先順位をつけるためです

3. 設定が複雑な場合の難所

添付ファイルは「時間がかかるが、やればできる」領域です。それに対して、移行の可否そのものに関わるのが設定の複雑さです。

次のものがある場合、移し替えはややこしくなります。

  • Zendesk特有の複雑なチケットルーティング
  • 細かいSLA設定

どちらも、Zendeskで長く運用してきた会社ほど作り込まれ、日々の業務がその設定に乗っている部分です。

HubSpot側もルーティングやSLAの機能は拡充されていますが、Zendeskで作り込んだ設定がそのまま再現できるとは限りません。 移行前に、少なくとも次の点を検証してください。

  • 振り分け条件の数と種類
  • SLAの計測対象と、一時停止の条件
  • 営業時間・祝日の扱い

そして、ここは単なる作業上の注意点ではありません。HubSpot側で同じ運用ができない設定に業務が依存しているなら、それは移行の可否判断に直結します。 検証は移行計画の前段に置いてください。順序を逆にすると、判断のやり直しが効かなくなります。


4. チャネルの差に注意する

もう一つ、事前に確認すべきものがあります。チャネルです。ここは機能の優劣ではなく、それぞれのツールが何を得意としてきたかの違いです。

特に注意が必要なのが電話です。HubSpotのコール機能には、日本への発信時に発信者番号が非通知になる制限があり、電話サポートの一本化は基本的にうまくいきません。

LINEも、HubSpotでは標準チャネルではなく外部アプリ連携になります。ZendeskにLINEをつないでいるなら、同じ運用ができるかを事前に確認してください。

こうしたチャネルが多く連携されている場合、HubSpotに一本化すると、これまで1つの画面で完結していた対応がそうではなくなります。だからこそ、「Zendeskで何のチャネルをつないでいるか」の棚卸しが、移行判断の前提になります。

チケット件数や設定の話に入る前に、まずつないでいるチャネルを一覧にする。これが最初の一手です。


5. 移行を見送ったほうがいいケース

正直に書きます。次に当てはまるなら、無理に移行しないほうがいいです。

  • 電話やLINEなど、HubSpotが標準で得意としないチャネルの連携が多い
  • 極めて複雑なSLA設定を組んでいる
  • Zendesk特有の複雑なチケットルーティングに業務が依存している
  • サポート担当者の人数が多い

最初の3つは、いずれも現在うまく回っている運用を、移行によって壊しかねないケースです。4つ目はコストです。担当者が多いと、HubSpotの有償シート費用で統合後のほうが高くなることがあります。統合=コスト削減とは限らないので、人数ベースで試算してから判断してください。

統合は目的ではなく手段です。「サポートはZendeskのまま残す」という判断も、十分に合理的な選択肢として持っておいてください。


6. 移行のメリットが大きいケース

逆に、次の状況なら移行する価値は大きいです。

  • Zendeskではシンプルにチケット管理をしているだけ
  • 営業やマーケティングは別ツールを使っていて、ツールが分断されている

この場合、Zendeskで作り込んだ資産がそもそも軽いので、移行によって失うものがほとんどありません。一方で、分断されているツールを一つにまとめる効果はそのまま得られます。

営業・マーケ・サポートをまとめてHubSpotに統合することで、次の2つが手に入ります。

  • データ管理が楽になる
  • AI活用の基盤ができる

2つ目は補足が必要でしょう。顧客データが一箇所にあることが、AIに何かをさせる前提になります。 データが3つのツールに散っている状態では、AIに渡す材料を人間が集めて回ることになり、そこで手間が発生します。統合は、その前提条件を整える作業でもあります。

Harekaで支援した福利厚生サービス企業の事例では、ZendeskとSalesforceに分かれていたツールをHubSpotに統合しています。営業側でSalesforceを使っている場合は、SalesforceからHubSpotへの移行の費用・期間・進め方もあわせて確認してください。

→ ZendeskとSalesforceをHubSpotに統一した事例を見る


よくある質問(FAQ)

Q. ZendeskからHubSpotへの移行にどれくらいかかりますか?

A. 筆者が担当した案件では、チケット約5万件で約3ヶ月でした。ツールの実行時間ではなく、設計・テスト移行・検証・利用者への研修まで含めた期間です。データ移行の工数は添付ファイルの量で、全体の期間は研修や設定の複雑さで変わります。

Q. Zendeskのマクロは移行できますか?

A. 自動では移らず、HubSpot側でスニペット・テンプレート・ワークフロー等として作り直します。数が少なくシンプルなら難しくありません。多い・複雑な場合は、棚卸しして使われているものだけを作り直してください。

Q. 添付ファイルは移行できますか?

A. できます。ただし一番手間のかかる部分で、ツールによって移行品質にも差があります。少量のテスト移行で確認し、事前に添付ファイルの量を把握しておいてください。

Q. Zendeskからの移行をやめたほうがいいのはどんな会社ですか?

A. 電話やLINEなど、HubSpotが標準で得意としないチャネルの連携が多い会社、極めて複雑なSLA設定やZendesk特有のルーティングに業務が依存している会社です。サポート担当者が多い会社は、統合後に費用が上がることもあるため人数ベースで試算してください。


まとめ:判断軸は「目的」と「設定の複雑さ」

移行の動機は「Zendeskが悪い」ではありません。**「営業・マーケ・サポートを一つにしたい」**であることがほとんどです。

その目的に対して、判断軸は次のように整理できます。

  • Zendeskで組んでいる設定がシンプルなら、移行の価値は大きい。 失うものが少なく、統合の効果はそのまま得られます
  • 電話・LINE・SLA・ルーティングが複雑なら、慎重に。 現在回っている運用を壊してまで統合する理由があるかを、先に確かめてください

そして実務上、最初にやるべきことは決まっています。つないでいるチャネルの棚卸しと、添付ファイルの量の把握です。期間を見積もるなら、利用者への研修期間も忘れずに入れてください。


ZendeskからHubSpotへの移行を検討中なら

「うちの設定で移行できるのか」「移行すべきなのか、Zendeskを残すべきなのか」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。

HubSpot Japan CSMとして200社以上を支援した経験を持つ代表が、初回のご相談から移行・定着まで一貫して担当する体制で、現在のZendeskの設定・チャネル・データ量に照らして、移行の可否と現実的な期間を一緒に見極めます。

結論が「サポートはZendeskのまま残しましょう」になることも含めて、フェアにお答えします。お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。

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