製造業のHubSpot導入|費用感と定着の壁、見送るべきケース

製造業のHubSpot導入|費用感と定着の壁、見送るべきケース

岩間悠一

岩間 悠一

元HubSpot Japan カスタマーサクセスマネージャー/Hareka合同会社 代表

200社以上のHubSpot導入を支援。現在はHubSpotコンサルタントとして独立。CRM導入から活用定着・AI連携まで一気通貫で支援しています。

製造業でHubSpot導入のご相談を受けるとき、最初に出てくるのはほぼ決まっています。**「うちの現場で本当に使われるのか」**です。

機能の話でも価格の話でもありません。導入したものの誰も入力しない、という結末が見えている——その不安が先に立つ。製造業のCRM検討は、ここから始まることが多いです。

筆者はHubSpot JapanのカスタマーサクセスマネージャーとしてCRM導入200社以上を支援してきました。新卒時にはキーエンスで営業を経験しており、製造業の現場がどう動くかは、売る側として肌で知っています。

この記事では、製造業でHubSpotが選ばれてきた理由と費用の目安、そして見送ったほうがいいケースまでを正直に整理します。


1. 製造業のCRM導入が難しい理由

製造業がCRMを入れるときには、他業種と違う前提があります。

最大の壁は、ITツールへの抵抗が強い現場が多いことです。ハードウェアの世界であり、実際に現場に行って物を扱い、出社して対面で仕事をするカルチャーがあります。ITツールを駆使したり、オンラインミーティングを重ねたりする場面がそもそも少ない。だから新しいツールを現場に定着させる難しさが、他業種より大きくなります。

これは能力の問題ではありません。業務の重心が画面の外にあるという、業種の構造から来るものです。

構造面では、次の前提も重なります。

  • 商談サイクルが長く、案件が図面や仕様書ベースで進む。 数ヶ月から年単位で動く案件を、月次の進捗管理に落とし込む必要がある
  • 代理店・商社を経由する商流が多く、エンドユーザーとの接点を直接持てないことがある。 誰を顧客として管理するのかが、そもそも一意に決まらない
  • 既存顧客の保守・アフターサービス対応が売上に直結する。 営業の情報と技術サポートの情報を、分けて持ちにくい
  • 展示会が主要なリード獲得チャネルで、名刺が大量に発生する。 獲得の山が平準化されず、イベント単位で立つ

この4つが重なると、「営業案件だけを管理するCRM」では足りなくなります。製造業のCRM選定が他業種より難しくなるのは、この複合性が理由です。


2. 製造業でHubSpotが選ばれてきた3つの理由

そのうえで、製造業のお客様がHubSpotを選んできた理由は、大きく3つに整理できます。

理由1:ITツールへの抵抗が強い現場でも使える

セクション1で述べた現場文化があるからこそ、使いやすさを最優先の基準に置いてHubSpotを選ぶケースが多くありました。

機能が豊富なツールほど、現場の入力画面は複雑になります。ITツールに日常的に触れていない現場にとって、その複雑さはそのまま「使わない理由」になります。逆に言えば、画面を開いた瞬間に何をすればいいか分かることが、製造業では機能の数より重い評価軸になるということです。

理由2:マーケティング専門部署がなくても回る

製造業では、マーケティングが組織として強くないケースが多くあります。専門部署を持たず、営業企画やインサイドセールスがメルマガなどのメールコミュニケーションを兼務している会社が多い。

そういう会社でも、簡単に使えて、営業と同じプラットフォーム上で作業できる。マーケ専任がいなくても営業側で完結できることが、HubSpotを選ぶ理由になっていました。

「マーケティング担当を採用してから考える」ではなく、いまいる人員のまま始められる。ここが効きます。

理由3:名刺文化との相性

現場に営業が足を運ぶ文化なので、名刺交換が多い。だから名刺管理ツールのSansanと連携しやすいCRMを選ぶ、という判断でHubSpotになるケースがありました。

すでに回っている名刺の運用を壊さずに、そのままCRMにつなげられるかどうか。製造業ではこれが実務的な選定理由になります。


3. 定着させるために必要なこと

製造業のCRM導入で一番大事なのは、機能ではありません。現場への踏み込み方です。

はっきり言えば、ツールを設定して渡すだけでは、製造業の現場では使われません。 これは他業種でも起こりますが、製造業では確率が上がります。日常的にITツールを触る習慣がない以上、「あとは使ってください」が成立しないからです。

必要なのは次の2つです。

  1. 現場にしっかり入り込み、寄り添いながら導入する。 他業種以上に重要になります
  2. ツール選定の段階で「使いやすさ」を最優先の基準に置く

この2つが、製造業でHubSpotを定着させる条件です。順番も大事で、選定の時点で使いやすさを落としてしまうと、後からどれだけ寄り添っても取り返せません。

なお、定着しない構造そのものについては、HubSpotを導入したのに誰も使わなくなる理由と解決策で詳しく整理しています。製造業に限らず共通する部分が多いので、あわせてお読みください。


4. 費用の目安

先に明記しておきます。費用は製造業だから変わるものではありません。 業種別の価格体系は存在せず、どのプランを何シート使うかで決まります。

製造業でよくある構成は、営業管理の Sales Hub と、既存顧客からの問い合わせ・保守対応を受ける Service Hub の組み合わせです。セクション1で触れたとおり、製造業ではアフターサービスが売上に直結するため、営業だけでは足りないケースが多いからです。

公式価格表(hubspot.jp/pricing)によれば、両者の価格は同一で、次のとおりです。

プラン年払い月払い
Sales Hub Starter月額840円/シート月額2,400円/シート
Sales Hub Professional月額10,800円/シート月額12,000円/シート
Service Hub Starter月額840円/シート月額2,400円/シート
Service Hub Professional月額10,800円/シート月額12,000円/シート

公式価格表によれば、Professional には別途、必須で1回限りの導入支援費用180,000円がかかります。試算の際はここを忘れないでください。

シート単価である点も重要です。営業10名にSales Hub Professionalを年払いで入れるなら、月額108,000円が基準になります。「何人が実際に入力するのか」を先に決めないと、費用は出せません。 製造業の場合、全営業に配るのか、拠点の代表者だけにするのかで金額が大きく動きます。


5. 実際の事例

Harekaが支援した、製造業向けソフトウェアのコンサルティングを手がける企業(従業員200名以上)の事例です。

Salesforce Service Cloud から HubSpot Service Hub へ移行し、年間ライセンス費用を約50%削減しました。支援期間は60日間、全6回。問い合わせ対応(チケット管理)を中心とした導入で、営業とサービスのデータベース一本化まで行っています。

構築そのものはお客様に自走していただくレクチャー型で進めました。現場に入り込んで伴走することと、お客様が自分で回せる状態を作ることは、両立できます。

→ SalesforceからHubSpotへ――60日でライセンス費用50%削減

なお、この事例のように既存CRMからの乗り換えを検討している場合は、SalesforceからHubSpotへの移行支援のページもあわせてご覧ください。


6. 製造業でHubSpotを見送るべきケース

正直に書きます。次に当てはまるなら、HubSpotは最適解ではない可能性があります。

ケース1:組織が大きく、独自の商習慣に細かく沿ったCRMを作りたい

会社規模が非常に大きく営業組織が複雑で、その組織独自の商習慣に細かく合わせたCRMを作りたい場合です。

長年かけて作り込まれた承認や商流のルールを、一段の妥協もなく画面に落とし込みたいなら、HubSpotのカスタマイズ性だけでは対応が難しいことがあります。この場合、より作り込みの自由度が高いツールのほうが目的に合います。

ケース2:営業・マーケ以外の複雑な情報をすべてCRMに載せたい

商流が複雑なケースや、原価・コスト管理、在庫管理など、営業・マーケティング以外の領域の複雑な情報をすべてCRMに載せたいケースです。

ある一定の規模までは対応できます。ただし本当に複雑な領域になると、HubSpot単体では難しくなります。基幹システムの領域まで1つに寄せようとすると、無理が出るということです。

逆に言えば、営業と問い合わせ対応を中心に、現場が使えるツールを探しているなら、HubSpotは製造業に向いています。


よくある質問(FAQ)

Q. 製造業でHubSpotは定着しますか?

A. ITツールへの抵抗が強い現場でも定着させてきた実績はあります。ただし条件があります。使いやすさを最優先で選定すること、そして設定して渡すだけでなく現場に踏み込んで導入すること。この2つが揃わないと、製造業では定着しません。

Q. マーケティング部門がなくてもHubSpotは使えますか?

A. 使えます。営業企画やインサイドセールスがメール配信を兼務している製造業は多く、営業と同じプラットフォームで完結できるのがHubSpotの利点です。マーケティング担当を採用してから、という順番を踏む必要はありません。

Q. HubSpotはSansanと連携できますか?

A. できます。名刺交換が多い製造業では、Sansan連携のしやすさがCRM選定の理由になるケースがあります。展示会で大量に発生した名刺を、そのままCRMにつなげられるかどうかは実務的な判断材料です。

Q. 製造業でHubSpotが向いていないのはどんな会社ですか?

A. 大規模で独自の商習慣に細かく合わせたCRMを作りたい会社、または原価・在庫など営業・マーケティング以外の複雑な情報をすべてCRMに載せたい会社です。この場合はHubSpot単体では難しくなります。


まとめ:使いやすさで選び、現場に寄り添って入れる

製造業のCRM導入で失敗する原因は、機能不足ではありません。現場に使われないことです。

だから判断軸は1行で言い切れます。使いやすさで選び、現場に寄り添って入れる。 この2つができれば、製造業でHubSpotは機能します。

逆に、独自の商習慣を細部まで再現したい、あるいは原価や在庫まで1つに載せたい——そういう目的が中心にあるなら、無理にHubSpotを選ぶ必要はありません。目的と自社の状況から逆算するのが、後悔しないCRM選定です。


製造業のCRM導入をご検討なら

「うちの現場で本当に使われるのか」「HubSpotで足りるのか、それとも別のツールなのか」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。

HubSpot Japan CSMとして200社以上を支援した経験を持つ代表が、初回のご相談から導入・定着まで一貫して担当する体制で、現場の状況に照らして本当に使われる形を一緒に設計します。

結論が「HubSpotは合いません」になることも含めて、フェアにお答えします。お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。

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