CSMやCSMマネージャーから、よくこう聞かれます。
「解約の予兆は、どこを見れば分かりますか」
予兆は、CRMの中に出ます。ただし、予兆を見つけることと、解約を止めることは別の仕事です。見つけた後に何をするかで、結果が変わります。
筆者はHubSpot JapanのCSMとして200社以上を支援してきました。この記事では、解約の前兆となる4つのサインと、見つけた後に最初にやるべきこと、そして正直に言って止められないケースを書きます。
1. 解約の前兆となる4つのサイン
サイン1:ログイン頻度の低下、使われるべき機能が使われていない
最初に見るのは、ログイン頻度です。そして、使われるべき機能が使われていないか。
ログインが減っているのは、製品が業務から外れ始めているサインです。ログインはあっても、そのお客様にとって使われるべき機能が使われていなければ、同じく危険です。利用状況をどう指標にするかは、ヘルススコアの設計|利用状況が効く理由と外れるケースにまとめています。
サイン2:問い合わせの減少
問い合わせが減ることも前兆です。
問い合わせが減るのは、一見すると良いことに見えます。困りごとが減った、うまく使えている、と受け取りたくなります。しかし、使っていなければ問い合わせは生まれません。問い合わせの減少は、製品から離れていることの表れでもあります。
サイン3:担当者の交代
担当者の交代も前兆になります。
ただし、交代自体が即解約ではありません。危険なのは、その担当者と連絡が取れなくなる状況です。前任者とつながっていた関係が、後任者に引き継がれないまま途切れる。これが危険です。
サイン4:ビジネスがうまく回っていないことを示す数値
4つ目は、製品の使い方ではなく、お客様のビジネスそのものの数値です。
HubSpotで言えば、コンタクトや取引が追加されない状態です。新しい見込み客が入ってこない、新しい商談が生まれていない。これは、お客様のビジネスがうまく回っていないことを示しています。
2. 兆候を見つけたら:とにかく担当者に連絡を取る
ここが、この記事で最も伝えたいことです。
予兆を見つけたら、とにかく担当者に連絡を取ってください。
その担当者と繋がらないなら、別の担当者を当たります。 誰かと繋がって状況を確認すること。これが、最初にやらなければならない対応です。
分析を深めることでも、社内で対策を議論することでもありません。予兆はあくまで数字です。その裏で何が起きているかは、お客様と話さなければ分かりません。
そして繋がれたら、まず状況を確認します。 何が起きているのか。なぜ使われなくなっているのか。担当者が変わったのか、ビジネスに変化があったのか。ここを確認して、初めて打ち手が決まります。予兆のあるアカウントを週次でどう追い、マネージャーがどこで介入するかは、CSMの週次レビューで見るもの|アクションと更新フォーキャストにまとめています。
3. 可能性がある状態:「使いたいのに困っている」
状況を確認した結果、お客様が**「使いたいのに困っている」**のであれば、まだ可能性はあります。
やるべきことは、うまく使えていない理由を見つけて解消することです。
そして、ここで出し惜しみをしないでください。ピンチのときこそ、重めにリソースを投下します。 濃い頻度でミーティングをして、なるべく早くボトルネックを解消する。予兆が出ているお客様に、通常と同じペースで接していては間に合いません。
筆者がHubSpot Japan在籍時に支援した大手SaaSコンサルティング会社(約800名)は、導入を進めた担当者の退職で、HubSpotが誰にも使われない状態になっていました。契約はあるのに、データすら入っていない。まさに担当者の交代から、製品が止まった状態です。そこから月1回・約1年半の伴走で、HubSpotの利用スコアを10から70まで引き上げ、営業とマーケティングがデータで回る組織にしています。
→ 放置されたHubSpotを再生――利用スコアを10→70へ
導入したツールが使われなくなる流れそのものについては、HubSpotを導入したのに誰も使わなくなる理由と解決策にも書いています。
4. 止められないケース:正直に書きます
すべての解約が止められるわけではありません。正直に書きます。
経営者の一声で決まっている場合
経営者の一声で解約が決まっている場合です。現場がどれだけ製品を使っていても、経営者が別の判断をしていれば、CSMが現場と話して覆せるものではありません。
ビジネスそのものがうまくいっていない場合
ビジネスそのものがうまくいっておらず、潰れてしまう場合です。製品の使い方の問題ではなく、お客様の事業の問題です。
こういうときは、どうしようもありません。
だからこそ、連絡を取って状況を確認することに意味があります。「使いたいのに困っている」のか、「もう決まっている」のか。前者ならリソースを投下し、後者なら無理に追わない。この見極めが、CSMの時間を正しく使うことにつながります。
5. やるべきこと・やりすぎると壊れるケース
やるべきこと
- 4つのサインを定期的に確認する:ログイン・機能の利用、問い合わせ、担当者、ビジネスの数値
- 予兆を見つけたら、すぐに担当者に連絡を取る:繋がらなければ別の担当者を当たる
- 「使いたいのに困っている」なら、重めにリソースを投下する
やりすぎると壊れるケース
- 予兆の分析に時間をかけ、お客様への連絡が遅れる
- 止められないケースにまで、リソースを投下し続ける
- 担当者の交代を、即解約として扱う:交代自体が問題なのではなく、連絡が取れなくなることが問題です
よくある質問(FAQ)
Q. 解約の予兆で、最初に出るのは何ですか?
A. ログイン頻度の低下と、使われるべき機能が使われていない状態です。これに加えて、問い合わせの減少、担当者の交代、そしてHubSpotで言えばコンタクトや取引が追加されないといった、ビジネスがうまく回っていないことを示す数値が前兆になります。
Q. お客様の担当者が交代したときは何をすべきですか?
A. 後任の担当者と連絡が取れる状態を作ってください。交代自体が即解約ではありませんが、その担当者と連絡が取れなくなる状況は危険です。繋がらない場合は、別の担当者を当たってでも、誰かと繋がって状況を確認します。
Q. 解約の予兆を見つけたら、最初に何をすればいいですか?
A. とにかく担当者に連絡を取ります。繋がらなければ別の担当者を当たります。誰かと繋がって状況を確認することが、最初にやらなければならない対応です。お客様が「使いたいのに困っている」のであれば、濃い頻度でミーティングをして、なるべく早くボトルネックを解消します。
Q. 止められない解約はありますか?
A. あります。経営者の一声で決まっている場合と、ビジネスそのものがうまくいっておらず潰れてしまう場合です。こういうときはどうしようもありません。だからこそ、連絡を取って状況を確認し、止められる解約にリソースを集中させることが大切です。
まとめ:予兆を見つけたら、まず繋がる
判断軸は1行です。予兆を見つけたら、分析より先に、誰かと繋がって状況を確認すること。
予兆はCRMに出ます。しかし、その裏で何が起きているかはお客様と話さなければ分かりません。「使いたいのに困っている」なら、ピンチのときこそ重めにリソースを投下する。止められないケースは、正直に見極める。この順番で動いてください。
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