カスタマーサクセスの責任者から、よくこう聞かれます。
「ヘルススコアには、何を入れればいいですか」
筆者はHubSpot JapanのCSMとして200社以上を支援しました。その中でヘルススコアを見ながらお客様を担当してきた経験から、この記事では本当に効いた指標と、スコアが外れたケースを書きます。
先に結論を書くと、効いたのは製品の利用状況です。ただし、スコアだけで判断すると外れます。
1. 基本設計:ログイン状況と利用状況から作る
ヘルススコアは、システムへのログイン状況や利用状況をもとに設計します。
HubSpotであれば、追跡できるアクションには次のようなものがあります。
- アカウントの登録ユーザー数、ログイン頻度
- コンタクト・会社・取引の登録件数
- メール送信数
- レポートやフォームの作成数、アクティブ数、フォーム送信数
- ワークフローの稼働数、アクティブ数
これらは、お客様が製品をどれだけ、どう使っているかを示す数字です。ヘルススコアの土台は、この利用状況の数字で組み立てます。
2. 効いた指標:製品の利用状況(usage)
実際に効いたのは、**製品の利用状況(usage)**でした。
お客様が製品をしっかり使っていれば継続し、使っていなければ継続されない。この傾向は明らかでした。
筆者がHubSpot Japan在籍時に支援した大手SaaSコンサルティング会社(約800名)では、担当者の退職で放置されていたHubSpotを、月1回・約1年半の伴走で再生しています。HubSpotの利用スコアは10から70に向上し、営業とマーケティングがデータで回る組織になりました。利用状況の数字が、そのまま活用の度合いを示していた事例です。
→ 放置されたHubSpotを再生――利用スコアを10→70へ
同じく在籍時に支援した人材派遣会社では、上層部の判断で導入されたまま放置されていたMarketing Hubを立ち上げ、放置されていたハウスリストから四半期に1件ペースで契約が生まれる状態にしています。使われていなかったツールが、使われるようになって成果につながった事例です。
→ Marketing Hub再活用で契約が生まれる仕組みに【人材派遣会社】
3. ただし粒度が重要:「使っている・使っていない」では粗すぎる
ここが、この記事で最も伝えたいことです。
利用状況を**「使っている・使っていない」とざっくり捉えないでください。**
製品ごとに、クリティカルな機能があります。
- この機能を使っていれば、解約はない
- この機能を使っていても、解約されることはある
どちらも同じ「使っている」に数えてしまうと、スコアは意味を失います。継続を左右する機能と、そうでない機能を同じ重みで扱うことになるからです。
だから、どの機能が継続に効くのかを細かく見る必要があります。ヘルススコアの設計で時間をかけるべきなのは、指標の数を増やすことではなく、この見極めです。
4. 外れるケース1:スコアが良いのに解約
利用状況が効くと書きました。しかし、スコアが外れたケースもあります。
1つ目は、スコアが良いのに解約されたケースです。原因は経営層の判断でした。
現場はしっかり使っていました。スコアも良好でした。しかし経営層には別のビジョンがあり、他社製品へ乗り換えたいと考えていました。
見落としていたのは、現場と経営層の発想の違いです。
- 現場:目の前の業務のために、当たり前に製品を使う
- 経営層:別のビジョンを描き、その実現には別の製品が必要だと判断する
利用状況のスコアに表れるのは、現場の動きです。経営層が何を考えているかは、スコアには出てきません。
5. 外れるケース2:スコアが悪いのに更新
2つ目は逆で、スコアが悪いのに更新されたケースです。
CSM側は、他のユーザーと比較して「あまり使えていない」と判断していました。しかしお客様の視点では、**「必要なだけ使えていて、ROIが出ている」**と捉えられていました。
CSMが見ているのは、他のお客様との比較です。お客様が見ているのは、自社にとっての費用対効果です。比較の軸が違えば、同じ利用状況でも評価は逆になります。
6. 結論:スコアは会話のきっかけであって、判断の代わりではない
2つの外れるケースから言えるのは、次のことです。
ヘルススコアが悪い=一概に悪い、ではありません。
大事なのは、お客様の感覚を知ることです。スコアが悪ければ、まずお客様に聞く。「必要なだけ使えている」のか、「使いたいのに困っている」のか。スコアが良くても、経営層の考えまで確かめる。
スコアは会話のきっかけであって、判断の代わりではありません。
スコアが悪いお客様への具体的な動き方は、解約予兆はCRMのどこに出るか|見つけた後にやることにまとめています。逆に、利用状況のデータはアップセルのきっかけにもなります。ただし提案するかどうかは会話で判断します。詳しくはアップセルの機会はCRMより会話に出る|CSMからの渡し方にまとめています。
ヘルススコアをCSMの週次レビューでどう使うかは、CSMの週次レビューで見るもの|アクションと更新フォーキャストにまとめています。
7. やるべきこと・やりすぎると壊れるケース
やるべきこと
- 利用状況(usage)を土台にスコアを組む
- 製品ごとに、継続に効くクリティカルな機能を見極める
- スコアが動いたら、お客様と話して感覚を確かめる
やりすぎると壊れるケース
- スコアだけで、お客様の状態を判断する
- 「使っている・使っていない」の粗い区分で、全機能を同じ重みで数える
- 他のユーザーとの比較だけで、「使えていない」と決めつける
スコアを信じすぎると、良いスコアの裏にある経営層の判断を見落とし、悪いスコアのお客様に不要な介入をすることになります。
よくある質問(FAQ)
Q. ヘルススコアには何を入れるべきですか?
A. システムへのログイン状況と利用状況です。HubSpotであれば、登録ユーザー数とログイン頻度、コンタクト・会社・取引の登録件数、メール送信数、レポートやフォームの作成数・アクティブ数・フォーム送信数、ワークフローの稼働数・アクティブ数などを追跡できます。
Q. ヘルススコアは利用状況だけで足りますか?
A. 利用状況は最も効く指標ですが、それだけでは外れるケースがあります。現場がしっかり使っていても、経営層が別のビジョンで他社製品への乗り換えを考えている場合、スコアには表れません。スコアは会話のきっかけとして使い、お客様の感覚を直接確かめてください。
Q. ヘルススコアが良いのに解約されるのはなぜですか?
A. 経営層の判断によるものです。現場は目の前の業務のために当たり前に製品を使いますが、経営層は別のビジョンを描き、その実現には別の製品が必要だと判断することがあります。利用状況のスコアに表れるのは現場の動きで、経営層の考えは表れません。
Q. ヘルススコアが悪い顧客にはどう接すればいいですか?
A. まずお客様の感覚を確かめます。CSM側が「あまり使えていない」と判断していても、お客様は「必要なだけ使えていて、ROIが出ている」と捉えている場合があります。スコアが悪い=一概に悪い、ではありません。「使いたいのに困っている」のであれば、その理由を見つけて解消します。
まとめ:スコアで気づき、会話で判断する
判断軸は1行です。ヘルススコアは会話のきっかけであって、判断の代わりではない。
効くのは製品の利用状況です。ただし、クリティカルな機能まで細かく見なければ意味がありません。そしてスコアが良くても悪くても、最後はお客様の感覚を知ることで判断が決まります。
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