Excelで顧客管理をしてきた会社がHubSpotに移るとき、実はそこまで困りません。小規模の段階であれば、移行そのものは重い作業になりにくいからです。
ただし、詰まるポイントは決まっています。 そしてそれは、データ量の多さではありません。Excelという道具の作りと、CRMという道具の作りが根本的に違うことから来るものです。
筆者はHubSpot JapanのカスタマーサクセスマネージャーとしてCRM導入200社以上を支援してきました。この記事では、Excelからの移行で必ず出てくる3つの難所と、移行を機に向き合うことになるKPIの話を整理します。
1. 最大の難所:オブジェクト設計とデータ加工
Excelからの移行で一番重いのは、ここです。
Excelはオブジェクト構造で管理されていません。 よくあるのが、1つのシートの中で会社リスト・顧客リスト・案件リストを分けずに全部管理しているケースです。行が何を表しているのかが、行によって違う。列(項目)も、会社情報・顧客情報・案件情報が混ざっています。
一方でHubSpotは、コンタクト(人)・会社・取引(案件)という単位でデータを持ちます。それぞれが独立したレコードとして存在し、関連付けでつながる構造です。
つまり移行作業は、ファイルを読み込ませることではありません。最初にオブジェクト構造を理解したうえで、HubSpotに移行するためのデータ加工が必要になります。
具体的には、1枚のシートを「会社」「人」「案件」に分解し、それぞれに一意のキーを作り、関連付けできる形に整える作業です。ここを飛ばしてそのまま取り込むと、同じ会社が何十件も重複して登録される、案件と担当者がつながらない、という状態になります。
Excel移行の工数は、データ量ではなくシートの混ざり具合で決まります。 見積もりを取る前に、自社のシートが何と何を混ぜて持っているかを確認してください。
2. レポートの再現
2つ目の難所がレポートです。
Excelは表計算ソフトなので、レポートを柔軟かつ複雑に作り込めます。関数を重ね、条件を足し、独自の集計表を育ててきた会社は多い。この作り込まれたレポートを、HubSpotでそのまま再現しようとすると難しくなります。
CRMのレポートは、蓄積されたデータ構造の上に成り立ちます。自由に数式を書ける表計算とは設計思想が違うため、「まったく同じ見た目・同じロジック」を求めると行き詰まります。
ここでの正解は、同じものを作ろうとしないことです。そのレポートで何を判断していたのかに立ち返り、CRM側の作りで同じ判断ができる形を組み直す。 移行前に、使っているレポートを「何を見るためのものか」で棚卸ししておくと、この工程が軽くなります。
3. 目標データの管理
3つ目は目標管理です。HubSpotはある程度上位のプランでないと、目標機能が柔軟に使えません。
Excelでは、目標値をセルに直接書き込んで、実績と並べて表示するのが簡単です。同じ感覚でCRMに持ち込もうとすると、プランによって制約に当たります。
移行を計画する段階で、「目標をどう持ち、どう見せるか」を先に決めておいてください。ここはプラン選定に直結します。
4. 移行を機に、KPIの見直しが発生する
ここが、Excel移行で一番見落とされる点です。
Excelから移行するタイミングでは、KPIやゴール設定・目標設定を見直す場面が出てきます。 これはHubSpotに限りません。SalesforceでもZohoでも同じです。CRMは決まったデータ構造を持つ道具なので、その構造に自社の指標を載せ直す作業が必ず発生します。
そして基本的に、これは良い方向の見直しになります。Excelで運用していた指標には、集計しやすいから使っていただけの数字が混ざっていることが多いからです。構造に載せ直す過程で、本当に見るべき数字が絞り込まれます。
ただし、ここが負荷になる会社もあります。次に書きます。
5. 見送るべきケース
正直に書きます。Excelのままでいい会社は、ほぼありません。 顧客数が増えれば、Excelは必ず限界を迎えます。
ただし要注意なケースがあります。Excelがあまりに複雑に作り込まれ、シートと日々の業務が完全にリンクしている場合です。
この状態では、シートが単なる記録ではなく、業務フローそのものになっています。そしてCRMに移せば、前述のとおりKPIや目標設定の見直しが発生します。つまり、従来の業務フローをどうしても変えたくない会社は、移行の難易度が上がります。
判断軸はシンプルです。業務フローを見直す意思があるかどうか。その意思があるなら、Excelからの移行は投資に見合います。ないなら、まずそこを合意してから着手してください。ツールの問題ではなく、意思決定の問題だからです。
6. 実際の事例
Harekaが支援した投資ファンド(従業員約30名)の事例です。
Excelで顧客・営業情報を管理しており、情報の関連性が見えない、レポートが手動、メンテナンスが手間、という課題を抱えていました。60日間のレクチャー型支援で HubSpot Sales Hub Professional をフル活用できる状態にし、AIとの連携まで実現しています。
→ Excel管理からHubSpotへ――60日でAI連携まで【投資ファンド】
移行作業そのものの進め方については、HubSpotへのデータ移行の進め方で3つの方法と自力でやれる範囲を整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q. ExcelのデータはHubSpotに移行できますか?
A. できます。ただしファイルをそのまま取り込むのではなく、会社・人・案件に分解してから取り込む必要があります。1枚のシートに複数の情報が混ざっているほど、この加工作業が重くなります。
Q. Excelからの移行にどれくらいかかりますか?
A. 投資ファンドの事例では、レクチャー型の支援で60日間でした。期間を左右するのはデータ量よりも、シートの構造の複雑さと、レポート・目標をどこまで作り直すかです。
Q. Excelで作っていたレポートはHubSpotで再現できますか?
A. 同じ見た目・同じロジックのまま再現しようとすると難しくなります。そのレポートで何を判断していたかに立ち返り、CRM側の構造で同じ判断ができる形に組み直すのが現実的です。
Q. Excelのままでいい会社はありますか?
A. ほぼありません。ただしExcelが複雑に作り込まれ、シートと日々の業務が完全に一体化していて、かつ業務フローを変える意思がない場合は、移行の難易度が上がります。
まとめ:Excel移行の成否は「構造を分解できるか」で決まる
判断軸は1行です。1枚のシートを会社・人・案件に分解できるかどうか。 ここさえ越えれば、Excelからの移行は難しくありません。
レポートも目標も、移行を機に見直すことになります。それは失うものではなく、整理されるものです。業務フローを見直す意思さえあれば、Excelからの移行は最も費用対効果の高いCRM導入になります。
Excelからの移行をご検討なら
「うちのシートで移行できるのか」「何から手をつければいいのか」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。
HubSpot Japan CSMとして200社以上を支援した経験を持つ代表が、初回のご相談から導入・定着まで一貫して担当する体制で、現在のExcelの構造に照らして、移行の進め方と必要なプランを一緒に見極めます。
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