HubSpotへのデータ移行を控えた担当者から、必ず聞かれることがあります。
「これ、自分たちでやれますか」
答えは条件次第です。そして条件はかなりはっきりしています。この記事では、移行の3つの方法と、自力でやれる範囲の線引きを書きます。移行元がどのツールであっても共通する話です。
筆者はHubSpot JapanのカスタマーサクセスマネージャーとしてCRM導入200社以上を支援してきました。失敗の話も含めて、正直に整理します。
1. データ移行の3つの方法
HubSpotへデータを移す方法は3つです。
方法1:CSVファイルでの移管(ファイル移管)
元のツールからCSVで書き出し、HubSpotに取り込む方法です。最も手軽で、最もよく使われます。
特別な準備が要らず、画面操作だけで完結します。だから多くの会社が最初にこれを選びます。
方法2:アプリ連携
連携できるCRMであれば、一度連携させたうえで移管する方法です。ツール同士をつないでデータを受け渡すため、手作業の介在が減ります。
移行元が連携に対応しているかどうかが前提条件になります。
方法3:APIでの移管
プログラムからHubSpotにデータを流し込む方法です。データ量が多い場合や、移行時に加工が必要な場合に選びます。
事前の設計と実装が必要になりますが、件数が増えても手作業が増えないのが利点です。
2. 一番多い失敗:ファイル移管でのミス
ここが、この記事で最も伝えたい部分です。
一番多い失敗は、ファイル移管でのミスです。
手軽に見えるのに、ファイル移行は非常に難しく、どうしてもミスが発生します。 これは注意深さの問題ではありません。列の対応付け、文字コード、日付の形式、空欄の扱い、既存レコードとの突き合わせ——判断点が多すぎるからです。
そして最も厄介なのが、重複データが生まれる恐れです。
重複が怖いのは、取り込んだ瞬間には気づきにくいことです。件数は増えているので、一見すると成功しているように見える。異常に気づくのは、しばらく運用してからです。同じ会社が何件も出てくる、担当者が別々のレコードにぶら下がっている、送ったメールが同じ人に二重に届く。
そして発覚した後が本番です。ミスの原因を特定して修正するのに、膨大な時間がかかります。 どの取り込みで何が起きたのかを遡り、どれが正でどれが誤りかを判定し、関連付けを保ったまま統合する。移行作業そのものより長くかかることも珍しくありません。
筆者自身にも経験があります。だから断言します。ファイル移管は「手軽な方法」ではなく、「手軽に見える方法」です。
3. 自力でやれる範囲
では、どこまでなら自社でやれるのか。線引きは明確です。
次の3つがすべて当てはまるなら、自力で進められます。
- データ量が少ない
- 作成するプロパティ(項目)も少ない
- 元のCRMのオブジェクト構造もシンプル
この条件下であれば、CSVでの取り込みは現実的な選択肢です。判断点が少なく、間違えても影響範囲が把握できるからです。
逆に、これらが複雑でデータ量も多いなら、専門家に依頼したほうがいいです。
判断軸を言い換えます。やり直しが効く規模かどうか。 数百件なら、間違えても消して入れ直せます。数万件を超え、関連付けが複雑に絡んでいるなら、やり直しそのものが大工事になります。
移行前に何を確認しておくべきかは、移行前チェックリストにまとめています。着手前にこちらを通してください。
4. 実際の事例
規模と難易度の異なる3つの事例です。
アプリ開発企業(従業員約100名) は、Salesforceからの移行で数十万件のデータを欠損ゼロで移しました。同じ期間内に売上管理の構造再設計まで行い、12回のクリック作業をワンクリックにしています。この規模になると、ファイル移管では成立しません。
→ Salesforce移行で入力作業を12分の1に――AI活用のCRM再設計
ヘルスケア領域のスタートアップ(従業員20名以下) は、営業・CS・請求管理までAirtableで運用していました。「移すもの・残すもの」を見極めるスコープ設計から入り、60日間でSales Hub・Service Hubの同時導入を完了しています。
→ AirtableからHubSpotへ――60日で顧客管理を一元化
宿泊・リゾート事業者向け業務管理SaaS企業 は、APIのない旧CRM(Highrise) からの移行でした。連携もAPIも使えない条件下で、約2.5ヶ月・全6回で営業とサポートの両方をカットオーバーしています。
→ HighriseからHubSpotへ移行――2.5ヶ月で営業・サポートを統一
移行元ごとの進め方については、SalesforceからHubSpotへの移行に費用の考え方と期間の目安をまとめています。要件定義から設計・移行・定着までを任せる場合は、SalesforceからHubSpotへの移行支援のページをご覧ください。
5. 移行を始める前にやること
3つの方法のどれを選ぶかは、実は最初の論点ではありません。先に決めるべきは、何を移して何を移さないかです。
全部移そうとすると、期間も費用も膨らみます。そして移したデータの多くは、その後使われません。
- いま業務で参照しているデータはどれか
- 過去何年分が必要か
- 移さずにアーカイブで残せるものはないか
この棚卸しを先にやると、移行の規模が変わります。規模が変われば、自力でやれるかどうかの答えも変わります。
よくある質問(FAQ)
Q. HubSpotへの移行はCSVとAPIのどちらがいいですか?
A. データ量が少なく、項目も少なく、元の構造がシンプルならCSVで足ります。データ量が多い、移行時に加工が必要、といった条件があるならAPIを選んでください。連携に対応しているCRMからなら、アプリ連携も選択肢です。
Q. データ移行で重複を防ぐにはどうすればいいですか?
A. 取り込み前に、既存レコードと突き合わせるキーを決めておくことです。重複は取り込み直後には気づきにくく、発覚した後の修正に膨大な時間がかかります。件数が増えているから成功、と判断しないでください。
Q. データ移行を自力でできる目安は?
A. データ量が少ない、作成するプロパティも少ない、元のCRMのオブジェクト構造もシンプル。この3つがすべて当てはまるなら自力で進められます。1つでも外れて量も多いなら、専門家に依頼したほうが安全です。
Q. HubSpotへのデータ移行にはどれくらいかかりますか?
A. 事例では60日間、約2.5ヶ月というケースがあります。期間を左右するのはデータ量そのものより、元の構造の複雑さと、何を移して何を移さないかの判断です。
まとめ:やり直しが効く規模かどうか
判断軸は1行です。やり直しが効く規模なら自力で、効かない規模なら専門家に。
ファイル移管は手軽に見えて、最も失敗が多い方法です。重複が生まれると、修正に移行作業以上の時間がかかります。そして移行の成否は、方法の選択より前に、何を移して何を移さないかを決められたかで大きく変わります。
まず棚卸しから始めてください。
HubSpotへのデータ移行をご検討なら
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HubSpot Japan CSMとして200社以上を支援した経験を持つ代表が、初回のご相談から移行・定着まで一貫して担当する体制で、データ量と構造に照らした現実的な進め方を一緒に設計します。
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