営業とサポートなど、複数の部門でHubSpotを使い始めた会社の管理者から、よくこう聞かれます。
「チーム別のレポートを出したら、数字が合わないんです」
原因の多くは、レポートではなくチームの設計にあります。1人のユーザーが複数のチームに入っていて、両方のチームで数えられている。あるいは、全体を見るために入れたチームで、管理者の数字がカウントされている。
筆者はHubSpot JapanのカスタマーサクセスマネージャーとしてCRM導入200社以上を支援してきました。この記事では、支援先に説明してきたチーム機能の考え方と、レポートが崩れない権限・チームの作り方を書きます。
1. チーム機能とは
HubSpotのチーム機能は、ユーザーをグループ化し、権限管理やレポーティングを効率化するための仕組みです。
- 権限管理:「自分のチームのレコードだけ見られる」といった範囲の設定に使う
- レポーティング:チーム別の商談数、チケット対応数などを集計する単位になる
つまりチームは、「誰が何を見られるか」と「数字をどう分けて見るか」の両方の基準になります。この2つを1つの仕組みで担っているため、設計を誤るとどちらにも影響が出ます。
2. デフォルトチーム:レポートが崩れないための鍵
ここが、この記事で最も伝えたいポイントです。
HubSpotでは、1人のユーザーが複数のチームに所属できます。そのうえで、デフォルトチームという設定があります。
デフォルトチームは、ユーザーにとってメインの所属先です。 レポートやチームビューの基準になります。
複数のチームに属するユーザーがいても、デフォルトチームのみをカウント対象にすることで、正確なレポーティングができます。 営業とサポートを兼務している人がいても、デフォルトチームを営業にしておけば、その人の数字は営業チームとしてだけ数えられます。
「チーム別のレポートで数字が合わない」という相談の多くは、ここで解決します。兼務者のデフォルトチームが意図と違う設定になっていないか、まず確認してください。
3. 権限管理の実務:全体を見る管理者の設定
実務でよく出てくるのが、全体を見る管理者の扱いです。
管理者は、サポートチームと営業チームの両方のレコードにアクセスする必要があります。権限を「チームのレコードのみ」にしている場合、両方のチームのメンバーになっていなければ、片方のレコードが見えません。
一方で、管理者を両方のチームに入れると、レポートで管理者がどちらかのチームの人員として数えられてしまいます。
この両立は、次の使い分けで解決します。
- チームメンバーとしては、サポートチームと営業チームの両方に入る:両方のレコードにアクセスできる
- デフォルトチームは、ITチームに設定する:営業・サポートのレポートには数えられない
アクセスのためのチーム所属と、レポートのための所属先を分けて考える。これがデフォルトチームの使い方です。
4. プリセット:新入社員の追加を楽にする
もう1つ、運用を楽にする機能がプリセットです。
プリセットは、権限のパターンを事前に作っておく機能です。「営業担当」「サポート担当」「マネージャー」のように、役割ごとの権限セットを用意しておけば、新入社員を追加するときに毎回カスタム設定する手間を減らせます。
プリセットがないと、ユーザーを追加するたびに、閲覧・編集・削除の範囲を1つずつ設定することになります。設定漏れや、人によって権限がばらつく原因にもなります。ユーザー数が増える前に、役割ごとのプリセットを作っておいてください。
5. 最初に決めておくべき権限の粒度
権限の設計で、最初に決めておくべきことは2つです。
操作の範囲:閲覧・編集・削除
- 閲覧:レコードを見られるか
- 編集:レコードを変更できるか
- 削除:レコードを消せるか
特に削除は、誤操作の影響が大きい権限です。削除権限を持つ人は、管理者など最小限に絞るのが安全です。
対象の範囲:所有レコードのみ/チーム/全体
- 所有レコードのみ:自分が担当者になっているレコードだけ
- チーム:自分のチームのメンバーが担当しているレコード
- 全体:すべてのレコード
この2つを掛け合わせて、役割ごとの権限を決めます。例えば「営業担当は、チームのレコードを閲覧・編集できるが、削除はできない」といった形です。ここを先に決めておけば、プリセットもそのまま作れます。
金融業界のように、誰がどのデータを見られるかを明確に作り込む必要がある業種の考え方は、金融業界のHubSpot活用|1円もずれない設計と見送る条件に書いています。
6. 実際の事例
筆者が支援した企業では、宿泊・リゾート事業者向けの業務管理SaaS企業(10名前後、うちサポートチーム6名)が、営業管理はHighrise、問い合わせ対応はGmailの共有アドレスという分断された状態から、HubSpotへ移行しました。
約2.5ヶ月・全6回で営業・サポート両部門を同時にカットオーバーし、営業とサポートが同じデータベースを見る体制を初めて実現しています。同じデータベースを複数の部門が使うからこそ、チームの分け方と、誰が何を見るかの設計が必要になります。
→ HighriseからHubSpotへ移行――2.5ヶ月で営業・サポートを統一
7. 作り込むべきケース・シンプルでいいケース
チームと権限を作り込むべきケース
- 営業とサポートなど、複数部門が同じHubSpotを使う
- 兼務者や、全体を見る管理者がいる
- 部門ごとに見せてはいけないデータがある
- ユーザーの入れ替わりが頻繁にある
シンプルでいいケース
- ユーザーが数名で、全員が全データを見てよい:チームを細かく分ける必要はない
- 部門が1つしかない:チームは1つで足りる
少人数のうちから細かく作り込む必要はありません。ただし、2つ目の部門がHubSpotを使い始める前には、チームとデフォルトチームの設計を済ませておいてください。後から直すと、過去のレポートとの比較が崩れます。
よくある質問(FAQ)
Q. HubSpotで営業とサポートの見えるデータを分けられますか?
A. 分けられます。ユーザーを営業チームとサポートチームに分け、権限の対象範囲を「チームのレコード」に設定すれば、それぞれ自分のチームのレコードだけを見る状態になります。閲覧・編集・削除のどこまでを許可するかも、役割ごとに決められます。
Q. 営業とサポートを兼務する人はどう設定すればいいですか?
A. 両方のチームにメンバーとして入れたうえで、メインの所属先をデフォルトチームに設定します。レポートはデフォルトチームを基準に数えるため、兼務者が両方のチームで二重にカウントされることを防げます。
Q. HubSpotのチーム別レポートで数字が合わない原因は?
A. 複数のチームに所属しているユーザーのデフォルトチームが、意図と違う設定になっていることが原因の多くです。全体を見る管理者が営業やサポートのチームに入っている場合は、デフォルトチームをITチームなど別のチームに設定すると、レポートから外せます。
Q. 新入社員の権限設定を楽にする方法はありますか?
A. プリセットを使います。役割ごとの権限パターンを事前に作っておけば、新入社員を追加するときに毎回カスタム設定する必要がなくなります。設定漏れや、人によって権限がばらつくことも防げます。
まとめ:アクセスとカウントを分けて考える
判断軸は1行です。「どのレコードにアクセスするか」と「どのチームとして数えるか」を分けて設計すること。
アクセスはチームへの所属で、カウントはデフォルトチームで決まります。この2つを混ぜずに設計すれば、兼務者がいても管理者がいても、チーム別のレポートは崩れません。
レポートそのものの作り方は、HubSpotレポートの作り方|テンプレート→AI→カスタムの順にまとめています。
HubSpotの権限設計でお困りなら
「部門をまたいだ権限をどう設計すればいいか」「今のチーム設定でレポートが正しく出ているか」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。
HubSpot Japan CSMとして200社以上を支援した経験を持つ代表が、初回のご相談から導入・定着まで一貫して担当する体制で、組織の形に合わせたチームと権限の設計を一緒に作ります。
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