HubSpotでレポートを作り始めた担当者から、よくこう聞かれます。
「カスタムレポートの画面を開いたんですが、何から選べばいいか分からなくて」
この質問が出る時点で、順番が逆になっています。HubSpotのレポートは、いきなりカスタムレポートから作るものではありません。 テンプレートを確認し、次にAIで作成し、それでも足りない分だけカスタムレポートで手動作成する。この順番です。
筆者はHubSpot JapanのカスタマーサクセスマネージャーとしてCRM導入200社以上を支援してきました。この記事では、支援先に説明してきたレポート作成の進め方を書きます。
1. 推奨フロー:テンプレート→AI→カスタム
最初に全体の流れを示します。
- テンプレートレポートを確認する:既にあるものを探す
- AIで作成する:テンプレートにない場合、まずAIに頼む
- カスタムレポートで手動作成する:AIでうまくいかない場合に、手で作る
手間が小さい順に並んでいます。上から順に試し、見つかった時点で止める。これだけで、レポート作成にかかる時間は大きく変わります。
2. ステップ1:テンプレートレポートを確認する
HubSpotには、最初から多くのテンプレートレポートが用意されています。 商談数、成約率、パイプラインの推移、メールの開封率。一般的なKPIは、アナリティクススイートからだいたい見つかります。
Service Hubの場合は、チームパフォーマンスレポートがあります。平均クローズ時間、ファーストレスポンス時間、サポートボリュームなどが自動で出ます。サポートの責任者が見たい数字の多くは、ここで揃います。
デフォルトプロパティを使うべき理由
ここが、この記事で最も伝えたいポイントです。
HubSpotには既に作られているレポートが多くあり、デフォルトプロパティに値が入れば、そのレポートが勝手にできあがります。 逆に、同じ意味の独自プロパティを作ってしまうと、テンプレートレポートはその値を拾えません。結果として、本来なら不要だったカスタムレポートを自分で作ることになります。
レポート化を考えるなら、独自プロパティを増やす前にデフォルトプロパティを使ってください。 「取引の金額」「クローズ日」「チケットのステータス」など、HubSpotが最初から持っている項目で表現できるものは、そちらに入れる。独自プロパティは、デフォルトで表現できないものだけに絞ります。
この判断は、レポートを作り始めてからでは遅く、プロパティ設計の段階で決めておく必要があります。
3. ステップ2:AIで作成する
テンプレートに欲しいレポートがない場合、次はAIです。
最初のレポート作成時にAIを使うと、うまくいく場合が多いです。「今月クローズした取引を担当者別に集計して」のように、見たいものを言葉で伝えると、レポートの形まで作ってくれます。レポートビルダーの操作に慣れていない担当者ほど、この効果は大きくなります。
うまくいかなければ、手動で作ります。 複数のオブジェクトをまたぐ集計や、条件が細かいレポートでは、AIの出力が意図とずれることがあります。そのときは無理にAIで粘らず、次のステップに進んでください。
AIとレポートの組み合わせをさらに踏み込んで使う方法は、HubSpotのレポート作成、正直難しくないですか?——AIに任せたら革命だった話に書いています。
4. ステップ3:カスタムレポートで手動作成する
まずオブジェクトの数を決める
手動で作る場合、最初に決めるのはオブジェクトの数です。
- シングルオブジェクトレポート:1つのオブジェクトのみを使う(例:取引だけ、チケットだけ)
- カスタムレポート:複数のオブジェクトを組み合わせる(例:会社と取引、コンタクトとチケット)
1つのオブジェクトで足りるなら、シングルオブジェクトレポートのほうが作りやすく、壊れにくいです。
手順
カスタムレポートは、次の順番で作ります。
- プライマリデータソースを選択する:何を軸に数えるか
- プロパティを選択する:どの項目を使うか
- X軸とY軸にプロットする:何を横に並べ、何を縦に積むか
- ビジュアライゼーション方法を決める:棒グラフ、折れ線、表など
- フィルターを適用する:期間、担当者、ステージなどで絞る
式フィールドで計算値を使う
レポートの中で計算した値を使いたい場合は、式フィールドを使います。税込金額、商談率など、元のプロパティから計算で出せる値は、プロパティを増やさずにレポート側で作れます。
Starterではゼロから作れない
注意点が1つあります。HubSpot Starterでは、レポートをゼロから作ることはできません。 用意されているテンプレート以外は作れないため、カスタムレポートが必要ならProfessional以上が必要です。詳しくはHubSpot Starterでできること・できないことにまとめています。
5. 運用開始前に、1本だけ作っておく
導入プロジェクトで、筆者が必ず勧めていることがあります。
運用開始前に、簡単なレポートを1つ作っておくことです。 例えば、チケットのクローズ数。
これには2つの効果があります。
- メンバーが入力した内容が見える化される:入力した結果が、すぐ数字として見える
- 入力の意味が分かりやすくなる:「なぜこの項目を入れるのか」が、レポートを見れば分かる
入力ルールを説明するより、入力した結果がレポートに反映されるのを見せるほうが、定着は早くなります。
営業マネージャーが毎週どのレポートを見るべきか、レポートを増やしすぎないための考え方は、営業マネージャーが毎週見る数字|4つで足りる理由にまとめています。
6. 実際の事例
筆者が支援した企業では、製造業向けソフトウェアのコンサルティング会社(従業員200名以上)が、Salesforce Service CloudからHubSpot Service Hubへ移行しました。レポートについては、テンプレートレポートの活用から、カスタムレポートの作成方法までをレクチャーしています。60日間・全6回の支援で、営業とサービスのデータベースを一本化し、年間ライセンス費用の約50%削減を見込んでいます。
→ SalesforceからHubSpotへ――60日でライセンス費用50%削減
宿泊・リゾート事業者向けの業務管理SaaS企業では、ヘルプデスクの立ち上げと同時に、記録すべき項目を設計しました。月約1,000件の問い合わせが記録・分析できる状態になり、レポートで振り返れる土台ができています。
→ HighriseからHubSpotへ移行――2.5ヶ月で営業・サポートを統一
7. カスタムレポートを作るべきケース・作らなくていいケース
カスタムレポートを作るべきケース
- テンプレートにもAIにも、欲しい切り口がない
- 複数のオブジェクトをまたいで集計したい:会社ごとの取引金額とチケット数を並べる、など
- 自社独自のKPIを定点観測したい
作らなくていいケース
- テンプレートで同じ数字が見られる:デフォルトプロパティに値を入れれば済む
- 一度きりの分析:AIで出して終わりでいい
- 独自プロパティを作ったせいでテンプレートが使えないだけ:プロパティ設計を見直すほうが先
よくある質問(FAQ)
Q. HubSpotでどのレポートから作るべきですか?
A. まずテンプレートレポートを確認してください。一般的なKPIはアナリティクススイートから見つかります。運用開始前には、チケットのクローズ数のような簡単なレポートを1つ作っておくと、メンバーが入力の意味を理解しやすくなります。
Q. HubSpotのレポートはAIで作れますか?
A. 作れます。最初のレポート作成時にAIを使うと、うまくいく場合が多いです。見たいものを言葉で伝えればレポートの形まで作ってくれます。意図とずれる場合は、カスタムレポートで手動作成してください。
Q. 複数のオブジェクトをまたぐレポートは作れますか?
A. カスタムレポートで作れます。1つのオブジェクトのみならシングルオブジェクトレポート、複数を組み合わせるならカスタムレポートです。プライマリデータソースを選び、プロパティを選び、X軸とY軸にプロットし、ビジュアライゼーションとフィルターを決める順番で作ります。
Q. HubSpot Starterでカスタムレポートは作れますか?
A. 作れません。Starterでは用意されているテンプレート以外のレポートをゼロから作ることはできません。自社独自のKPIでレポートを作りたい場合は、Professional以上が必要です。
まとめ:手間の小さい順に試す
判断軸は1行です。テンプレート、AI、カスタムの順に試し、見つかった時点で止めること。
そして、テンプレートを活かすために、独自プロパティを作る前にデフォルトプロパティを使う。レポートの作りやすさは、レポートを作る段階ではなく、プロパティを設計する段階で決まります。
チーム別のレポートを正しく出すための設計は、HubSpotの権限とチーム設計|レポートが崩れない作り方にまとめています。
HubSpotのレポート設計でお困りなら
「見たい数字がテンプレートで出せるのか」「プロパティ設計から見直すべきか」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。
HubSpot Japan CSMとして200社以上を支援した経験を持つ代表が、初回のご相談から導入・定着まで一貫して担当する体制で、見たいKPIから逆算したプロパティとレポートの設計を一緒に作ります。
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