「今のCRM、変えたほうがいいでしょうか」——このご相談は本当に多いです。
そして多くの場合、乗り換えるべきかどうかより先に、確かめるべきことがあります。 いま抱えている不満の原因が、本当に製品にあるのかどうかです。ここを飛ばして切り替えると、同じ問題が新しいツールで再発します。
筆者はHubSpot JapanのカスタマーサクセスマネージャーとしてCRM導入200社以上を支援してきました。この記事では、乗り換えを検討していいタイミングと、切り替えても解決しないケースを整理します。
1. 外的要因のタイミング:節目は検討していい
まず分かりやすいのが、外から来るタイミングです。次の2つは、一度乗り換えを検討していい節目です。
契約期間が切れるタイミング
現在のCRMの契約期間が切れるタイミングです。年契約であれば、更新の数ヶ月前が検討の窓になります。
このタイミングが重要なのは、移行には期間がかかるからです。更新日の直前に検討を始めると、選択肢が「とりあえず更新」しかなくなります。結果として、不満を抱えたまま1年延びることになります。
値上げのタイミング
サービスの値上げが発表されたタイミングも節目です。支払う金額が変わるなら、支払う対象が妥当かを見直すのは自然な判断です。
この2つは、それ自体が乗り換えの理由ではありません。 検討を始める合図です。節目が来たら一度棚卸しする、という運用を持っておくと、判断が後手に回りません。
2. 外的要因以外で検討すべき2つのケース
節目以外で乗り換えを考えるなら、見るべきは次の2つです。
ケース1:現場で使われていない
最も多い相談がこれです。ただし——ここが本題ですが——「活用できていないから乗り換えれば解決する」という単純な話ではありません。
先にやるべきは、なぜデータが活用されていないのかを掘り下げることです。そのうえで、原因が次のどれかにあるなら、乗り換えを考えていいです。
- 使っているCRMが、自社の業務に対して適切でない
- 事業規模に合っていない(過剰、または不足)
- 必要な機能が不足している
逆に、原因がここにないなら、乗り換えは解決策になりません。詳しくはセクション3で書きます。
ケース2:データが分断されていて使いづらい
CRMの仕様上、データ分断が起きる製品もあります。 営業の情報とサポートの情報が別の場所に持たれる、マーケティングのデータが営業から見えない、といった構造です。
これは運用の問題ではなく、製品の作りから来るものです。日々の業務でその使いづらさが出ているなら、乗り換えを検討する理由になります。製品を変えなければ解消しないからです。
3. 切り替えても解決しないケース
ここは正直に書きます。
活用が進まない原因が、製品ではなく会社のカルチャーやガバナンスにある場合、ツールだけ乗り換えても意味がありません。
具体的には、次のような状態です。
- 入力するかどうかが現場任せで、入力しなくても困らない
- マネージャーがCRMのデータを見ておらず、報告は別の場で行われている
- 誰が何を入力する責任を持つのかが決まっていない
- データを使って意思決定する習慣が、そもそも組織にない
この状態で新しいCRMに移ると、移行コストを払って、同じ「使われないCRM」を手に入れることになります。むしろ悪化することすらあります。新しいツールへの学習負荷が加わる分、現場の抵抗が強まるからです。
そこを整備しないままツールだけ乗り換えても意味がない——これは断言できます。定着しない構造そのものについては、HubSpotを導入したのに誰も使わなくなる理由と解決策で詳しく整理しています。乗り換えを検討する前に、こちらを先に読んでください。
4. 乗り換えが機能した事例
実際に乗り換えが成果につながったケースは、いずれも製品側に理由があったものです。
製造業向けソフトウェアのコンサルティング会社(従業員200名以上) は、Salesforce Service Cloud から HubSpot Service Hub へ移行し、60日間・全6回の支援で年間ライセンス費用を約50%削減しました。契約満了というタイミングが検討の起点です。
→ SalesforceからHubSpotへ――60日でライセンス費用50%削減
アプリ開発企業(従業員約100名) は、契約満了に伴う移行で数十万件のデータを移しながら、同じ期間内に売上管理の構造再設計まで行いました。12回のクリック作業をワンクリックにしています。
→ Salesforce移行で入力作業を12分の1に――AI活用のCRM再設計
福利厚生サービス提供企業(従業員約200名) は、サポートがZendesk、営業がSalesforceという分断を解消するためにHubSpotへ統一しました。これはセクション2のケース2に当たります。
→ ZendeskとSalesforceをHubSpotに統一――重複コストを解消
Salesforceからの移行を具体的に検討している場合は、SalesforceからHubSpotへの移行に費用の考え方と期間の目安をまとめています。コストや複雑さに不満がある段階なら、Salesforceが高い・複雑と感じたときの判断基準から読んでください。
よくある質問(FAQ)
Q. CRMの契約更新前に何を確認すべきですか?
A. 現場で実際に使われているか、データが分断していないか、必要な機能が足りているかの3点です。そのうえで、使われていない場合は原因が製品にあるのか組織運営にあるのかを切り分けてください。更新日の直前ではなく、数ヶ月前に始めてください。
Q. 使われていないCRMは乗り換えるべきですか?
A. 原因次第です。製品が業務や事業規模に合っていない、必要な機能が足りていないなら乗り換えを検討していいです。原因が入力ルールやマネジメントの不在にあるなら、乗り換えても解決しません。
Q. 乗り換えで解決しないのはどんなケースですか?
A. 活用が進まない原因が、会社のカルチャーやガバナンスにあるケースです。入力の責任者が決まっていない、マネージャーがデータを見ていない、といった状態では、ツールを変えても同じ結果になります。
Q. CRMの乗り換えにはどれくらいかかりますか?
A. 60日程度で完了した事例もあれば、要件定義からカットオーバーまで約4ヶ月かかった事例もあります。データ量、連携の範囲、既存の作り込みの量で変わります。契約更新の直前から始めると間に合いません。
まとめ:不満の原因が製品にあるかどうか
判断軸は1行で言い切れます。いまの不満の原因が、製品側にあるのか、自社の運用側にあるのか。
製品側にあるなら、契約更新や値上げという節目を使って乗り換えを検討してください。運用側にあるなら、先に整備すべきものがあります。順番を逆にすると、コストだけ払って同じ場所に戻ります。
CRMの乗り換えを検討中なら
「乗り換えるべきなのか、今のまま立て直すべきなのか」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。
HubSpot Japan CSMとして200社以上を支援した経験を持つ代表が、初回のご相談から移行・定着まで一貫して担当する体制で、不満の原因が製品にあるのか運用にあるのかの切り分けからお手伝いします。
結論が「今のCRMのまま立て直しましょう」になることも含めて、フェアにお答えします。お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。