シード〜シリーズAのスタートアップから、よくこう聞かれます。
「CRMって、まだ早いですよね?」
答えは逆です。資金調達をしている拡大志向のスタートアップは、なるべく早く、最初から入れておくべきです。 組織化する前の段階で、Starterプランなどを導入しておく。これが筆者の結論です。
筆者はHubSpot JapanのカスタマーサクセスマネージャーとしてCRM導入200社以上を支援してきました。この記事では、なぜ「組織化の前」なのか、そして例外的に「今は入れなくていい」段階はどこかを書きます。
1. 組織化してからでは、データが一気に分散する
創業期は、営業も顧客対応も創業者か数名のメンバーが担っています。顧客の情報は頭の中とメールとスプレッドシートにあり、それで困りません。
問題は、人が増えた瞬間です。
営業担当が2人、3人と増え、インサイドセールスとフィールドセールスが分かれ、カスタマーサクセスが立ち上がる。このとき、CRMが入っていないと何が起きるか。
- 営業担当ごとに、別々のスプレッドシートで案件を管理し始める
- 問い合わせの記録は、各自のメールボックスに散らばる
- マーケティングが獲得したリードと、営業が追っている商談がつながらない
組織化した段階でCRMが入っていないと、データが一気に分散します。 そして一度分散したデータを後から集めるのは、最初から1箇所に貯めるよりはるかに手間がかかります。表記も粒度も担当者ごとに違うからです。
組織が動き始めてからCRMを入れようとすると、「新しいツールに乗り換えてもらう」という別のプロジェクトが発生します。営業が既に自分のやり方を持っている状態で、入力ルールを揃えるのは簡単ではありません。
2. 資金調達で問われる数字は、CRMからしか出てこない
早く入れるべき理由は、もう1つあります。こちらのほうが本質的です。
リード獲得数、商談数、商談転換率。 これらは営業管理の指標であると同時に、資金調達でも必要になる指標です。事業が伸びていることを、数字で説明する必要があるからです。
ところが、これらの数字は「その時点の数字」だけでは意味がありません。先月と比べてどうか、半年前と比べてどうか、という推移が問われます。推移を出すには、過去から継続してデータが貯まっている必要があります。
CRMを入れた日から、データは貯まり始めます。逆に言えば、入れる前のデータは取り戻せません。 次の調達のタイミングで「半年分の転換率の推移を見せてください」と言われたとき、半年前からCRMが入っていなければ出せないということです。
だからこそ、組織化する前から導入し、組織化とともに必要なデータを蓄積しておくことが決定的に大事です。早い段階からこうした数字をウォッチしておけば、調達の場だけでなく、日々の意思決定にも使えます。
3. 最初はStarterで十分
「最初から入れる」と言っても、いきなり大きな契約をする必要はありません。組織化前の段階なら、Starterプランから始めれば十分です。
Starterでも、コンタクト・会社・取引といった基本的なオブジェクトが使え、フォームやメール配信も揃っています。リード獲得数や商談数を貯めていく土台としては足ります。
筆者が支援した企業では、少数精鋭のWebマーケティング企業が、Gmailの過去メールとWordPressフォームに分散していた顧客情報をHubSpot Starterに集約し、2ヶ月でCRMが稼働する状態にしています。事業フェーズに対して過剰な投資にならないよう、Starterから始めることを提案した事例です。
→ Gmailの顧客管理をHubSpot Starterへ――2ヶ月でCRM稼働
Starterで何ができて何ができないかの線引きは、HubSpot Starterでできること・できないことにまとめています。
4. Professionalに上げるタイミング
Starterから始めた会社が、いつProfessionalに上げるべきか。目安は次の3つです。
- 自社独自のKPIでレポートを見たくなった:Starterではレポートをゼロから作れません
- 定型の手作業が無視できない工数になった:独自のワークフロー(自動化)が必要になった
- 営業からサポートまで、顧客のライフサイクル全体を追いたくなった
筆者が支援した企業では、ヘルスケア領域のスタートアップ(従業員20名以下)が、営業・CS・請求管理をAirtableで運用し、マーケティングだけHubSpot Starterを使っている状態でした。データが分断され、分析のたびに手作業が発生していたため、60日間でSales Hub・Service Hub(Professional)へ移行し、リード獲得から契約後のサポートまでを一元化しています。
→ AirtableからHubSpotへ――60日で顧客管理を一元化
この事例は、裏返せば「組織化の途中でデータが分かれてしまった」ケースでもあります。最初から1つのCRMに貯めていれば、移行そのものが不要でした。
5. 「早すぎる」サイン:入れなくていい段階
スタートアップに関して、CRMが早すぎるということは基本的にありません。
ただし、1つだけ例外があります。まだプロダクト開発段階で、営業活動が始まっていない場合です。
売る相手がいない段階では、貯めるべきデータがありません。リードも商談も発生していないのに、CRMの設定だけを先に作り込んでも、実際の営業が始まれば作り直すことになります。この段階なら、無理に今すぐ入れなくて構いません。
判断の目安はシンプルです。
- 営業活動が始まっている、または数ヶ月以内に始まる → 今すぐ入れる
- 資金調達を予定している → 今すぐ入れる
- プロダクト開発中で、営業活動がまだない → 営業開始の直前でいい
よくある質問(FAQ)
Q. シード期のスタートアップにCRMは必要ですか?
A. 資金調達をしている拡大志向のスタートアップなら必要です。組織化した後にCRMを入れようとすると、既にデータが担当者ごとに分散しています。リード獲得数・商談数・商談転換率の推移は資金調達でも問われるため、組織化の前から貯めておくべきです。
Q. スタートアップはHubSpot Starterで十分ですか?
A. 組織化前の段階なら十分です。基本的なオブジェクト、フォーム、メール配信が揃っており、リードや商談のデータを貯める土台になります。自社独自のレポートや自動化が必要になった段階で、Professionalを検討してください。
Q. いつProfessionalに上げるべきですか?
A. 自社独自のKPIでレポートを見たくなったとき、定型の手作業が無視できない工数になったとき、営業からサポートまで顧客のライフサイクル全体を追いたくなったときです。この3つが起きていないなら、Starterのままで構いません。
Q. CRMを入れなくていいのはどんな段階ですか?
A. まだプロダクト開発段階で、営業活動が始まっていない段階です。貯めるべきデータがないため、無理に今すぐ入れる必要はありません。営業活動が始まる直前に入れれば間に合います。
まとめ:人が増える前に入れる
判断軸は1行です。人が増える前に、データの置き場所を決めておくこと。
組織化してからでは、データは一気に分散します。そして資金調達で問われる数字は、CRMに貯まった推移からしか出てきません。営業活動が始まっているなら、Starterで構わないので今日から入れてください。
導入にどれくらいの期間がかかるかは、HubSpot導入にかかる期間|プラン別の目安と延びる原因にまとめています。
スタートアップのCRM導入をご検討なら
「今の段階で入れるべきか」「Starterで足りるのか」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。
HubSpot Japan CSMとして200社以上を支援した経験を持つ代表が、初回のご相談から導入・定着まで一貫して担当する体制で、事業フェーズと調達計画に照らしたプランと設計を一緒に決めます。
結論が「営業が始まるまで待ちましょう」になることも含めて、フェアにお答えします。お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。