営業マネージャーや営業企画の方から、こういう相談を受けることがあります。
「フォーキャストが、毎回ずれるんです」
月初に見込んでいた数字と、月末に着地した数字が合わない。担当者に聞くと「この案件はいけると思っていた」と言う。この状態が続く会社で原因を見ていくと、行き着くのはほとんどの場合、同じ場所です。
商談ステージの定義が、ずれています。
筆者はHubSpot JapanのCSMとして200社以上を支援してきました。この記事では、商談ステージの設計で起きる2つの失敗と、それを防ぐ仕組み、そして仕組みを入れすぎたときに起きることを書きます。
1. 一番多い失敗(1):ステージが主観的になっている
1つ目の失敗は、ステージが主観的になっていることです。
ステージA・B・C・Dのように、客観的な指標になっていない。「見込みが高そう」「前向きに検討中」といった、担当者の感覚で判断できるステージになっている。こうなると、担当者ごとに定義が異なります。
ある担当者にとっての「提案中」は、提案書を送った状態です。別の担当者にとっては、提案の場を設定できた状態です。さらに別の担当者は、口頭で方向性を話しただけでも「提案中」に進めます。
同じステージ名でも、中身がばらばらです。これでは組織内で統一されたステージ管理ができません。 そして、ステージごとの件数や金額を積み上げて作るフォーキャストは、このばらつきをそのまま引き継ぎます。フォーキャストがずれる原因は、ここにあります。
2. 一番多い失敗(2):ステージが多すぎる
2つ目の失敗は、ステージが多すぎることです。
営業は、手間のかかる入力を嫌います。ステージが多いほど、案件を動かすたびに「今どこにいるのか」を判断し、更新する回数が増えます。
ステージが多すぎると、混乱を招き、正しく運用されなくなります。 隣り合うステージの違いが分かりにくくなり、担当者は迷い、更新が後回しになる。結果として、パイプラインに表示されているステージと、案件の実態が離れていきます。
そして何より、現場の負担が大きい。 営業がCRMに入力しない理由の根本は「面倒だから」です。この点は営業がCRMに入力してくれない問題の原因と解決策に詳しく書いています。ステージの数は、その面倒さを直接左右します。
3. 有効な方法:ステージプロパティで「進む条件」を決める
では、主観をなくすにはどうするか。
有効なのが、**次のステージに進むために入力を必須とする「ステージプロパティ」**の設定です。
たとえば「提案」ステージに進むには、提案日と提案金額の入力を必須にする。「決裁者確認」に進むには、決裁者のコンタクトが関連付けられていることを必須にする。こうすると、ステージを進めるかどうかは担当者の感覚ではなく、必要な情報が揃っているかどうかで決まります。
ステージの定義が「言葉」から「入力された事実」に変わる。これが、主観をなくす仕組みです。担当者ごとの定義のずれは、ここで吸収できます。
なお、商談ステージは取引ができてからの管理です。その前段、リードがMQL・SQLを経て商談になるまでは、コンタクトのライフサイクルステージとリードステータスで管理します。インサイドセールスとフィールドセールスを分けている会社は、インサイドセールスと外勤の分業|CRMで揉めない設計も合わせて設計してください。
筆者が支援した企業では、アプリ開発企業(従業員約100名)がSalesforceからHubSpotへ移行する際、見積の必須チェックとステージの差し戻し、失注時の直前ステージの自動記録といった、運用を守るための仕組みを実装しています。ステージを「入力された事実」で動かす設計です。
→ Salesforce移行で入力作業を12分の1に――AI活用のCRM再設計
ただし、細かくしすぎないでください。 ここが、この記事で最も伝えたいことです。
4. やりすぎると壊れるケース:すべてを必須にする
SFAが形骸化したアカウントでよく見られるパターンがあります。
経営やマネジメント側の都合で入力項目を増やし、すべてを必須プロパティにしてしまうケースです。
マネジメント側から見ると、必須項目は増やしたくなります。あれも見たい、これも分析したい。ステージを進めるたびに必須にすれば、確実にデータが集まる。そう考えるのは自然です。
しかし現場から見ると、ステージを1つ進めるたびに、入力欄がいくつも並ぶことになります。商談が動いたのに、CRMを更新するのに時間がかかる。これが毎回続きます。
これは現場の過度な負担となり、使われなくなる直接の原因になります。 必須項目で縛られたCRMは、入力を強制する仕組みではなく、CRMを避ける理由になります。ステージを動かさなくなる、あるいはCRMの外で案件を管理し始める。こうして、データを集めるために入れた必須項目が、データが集まらない原因になります。
HubSpotが導入後に使われなくなる流れについては、HubSpotを導入したのに誰も使わなくなる理由と解決策にも書いています。
5. バランスの取り方:3者ですり合わせる
では、現場の意見だけを聞けばいいのか。そうではありません。
現場の意見ばかり聞けばいいわけでもありません。 現場に任せれば、入力項目は限りなく減ります。それでは主観的なステージに戻り、フォーキャストはまたずれます。
必要なのは、マネジメント層・IT側・現場側の3者ですり合わせて設計することです。
- マネジメント層:フォーキャストや分析に、何が必要か
- IT側:それを、どういう仕組みで入力させられるか
- 現場側:その入力が、日々の営業の中で続けられるか
そのうえで、「現場がしっかり入力する意識」と「入力させるための仕組み」をセットで作ります。 ステージプロパティは仕組みの側です。仕組みだけを入れても、意識がなければ抜け道が作られます。意識だけに頼っても、仕組みがなければ定義はずれていきます。どちらか一方では足りません。
6. やるべきケース・やりすぎると壊れるケース
ステージ設計を見直すべきケース
- フォーキャストが毎回ずれる:ステージの定義が担当者ごとに違う
- 同じステージ名で、担当者によって中身が違う:主観的なステージになっている
- ステージの更新が後回しにされている:ステージが多すぎる
やりすぎると壊れるケース
- マネジメント側の都合で、入力項目を増やし続けている
- ステージを進めるたびに、すべての項目を必須にしている
- 現場の意見を聞かずに、必須プロパティを決めている
この3つのどれかに当てはまるなら、必須項目を減らすことから始めてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 商談ステージはいくつが適切ですか?
A. 数そのものより、各ステージが客観的な条件で区切られているかどうかが重要です。そのうえで、多すぎるステージは混乱を招き、正しく運用されなくなります。担当者が迷わず判断でき、更新の手間が負担にならない数に絞ってください。
Q. 必須プロパティはどこまで縛るべきですか?
A. 次のステージに進むために本当に必要な情報だけに絞ります。すべてを必須にすると、現場の過度な負担となり、CRMが使われなくなる直接の原因になります。どこまで縛るかは、マネジメント層・IT側・現場側の3者ですり合わせて決めてください。
Q. 営業担当者ごとにステージの定義がずれるのを防ぐにはどうすればいいですか?
A. ステージを主観的な言葉ではなく、客観的な条件で定義します。有効なのは、次のステージに進むために入力を必須とするステージプロパティの設定です。ステージを進めるかどうかが、担当者の感覚ではなく、必要な情報が揃っているかどうかで決まるようになります。
Q. 商談ステージを減らすときは、どう進めればいいですか?
A. マネジメント層・IT側・現場側ですり合わせることから始めます。マネジメント層がフォーキャストに必要なもの、現場が日々続けられる入力、それを実現する仕組みを並べ、残すステージと必須項目を決めます。減らした後は、現場がしっかり入力する意識と、入力させる仕組みをセットで運用してください。
まとめ:客観的な条件で、最小限に
判断軸は1行です。ステージは客観的な条件で区切り、必須項目は現場が続けられる範囲に留めること。
主観的なステージはフォーキャストをずらし、多すぎるステージと必須項目は現場からCRMを遠ざけます。ステージプロパティは有効な仕組みですが、細かくしすぎれば壊れます。3者ですり合わせ、意識と仕組みをセットで作ってください。
ステージ設計ができたら、次はマネージャーが毎週何を見るかです。営業マネージャーが毎週見る数字|4つで足りる理由にまとめています。
商談ステージの設計でお困りなら
「フォーキャストがずれる原因を特定したい」「必須項目をどこまで絞るべきか」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。
HubSpot JapanのCSMとして200社以上を支援した代表が、初回のご相談から定着まで一貫して担当する体制で、マネジメント層・IT側・現場側のすり合わせからお手伝いします。
既に導入したSFAが使われなくなっている場合は、HubSpot再活用・定着支援もご覧ください。お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。