オンボーディングをパイプラインで管理する|止まる場所を先に知る

オンボーディングをパイプラインで管理する|止まる場所を先に知る

岩間悠一

岩間 悠一

元HubSpot Japan カスタマーサクセスマネージャー/Hareka合同会社 代表

200社以上のHubSpot導入を支援。現在はHubSpotコンサルタントとして独立。CRM導入から活用定着・AI連携まで一気通貫で支援しています。

CSMマネージャーやオンボーディング担当者から、こういう相談を受けます。

「オンボーディング中のお客様が、今どこまで進んでいるのか分からない」

担当CSMに聞けば分かる。しかしチーム全体で、どのお客様がどの段階にいて、どこで止まっているのかが見えない。気づいたら予定の期間を大きく過ぎているお客様がいる。オンボーディングが終わらないまま、利用が定着せずに解約の話が出てくる。

筆者はHubSpot JapanのCSMとして200社以上を支援してきました。この記事では、オンボーディングをパイプラインで管理するときのステージの区切り方と、この記事の核である止まる場所を先に知って、早めにボールを渡す進め方を書きます。


1. なぜオンボーディングをパイプラインで管理するのか

営業の商談をパイプラインで管理するのと同じ考え方で、オンボーディングもパイプラインで管理できます。HubSpotであれば、取引やチケットのパイプラインを、オンボーディング用に1本用意する形です。

パイプラインで管理すると、各お客様が今どのステージにいるかが一覧で見えます。どのステージに何社が滞留しているか、予定より長くとどまっているお客様はどこか。担当CSMの頭の中にあった進捗が、チーム全体で共有できる情報になります。


2. ステージの区切り方:時期か、回数か

オンボーディングのステージの区切り方は、2つあります。

方法1:時期で区切る

1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目といった期間でステージを動かす方法です。

オンボーディング期間が決まっていて、月ごとにやるべきことが決まっている場合に向いています。「1ヶ月目は初期設定、2ヶ月目はデータ移管、3ヶ月目は運用開始」というように、期間とやることを対応させます。月が変わればステージが進むので、更新のルールが明確です。

方法2:回数で区切る

ミーティング回数が決まっているなら、その回数で区切る方法です。

「全6回の支援」のように、オンボーディングのミーティング回数が決まっている場合に向いています。第1回、第2回……とミーティングが終わるごとにステージを進めます。ミーティングの間隔がお客様によって違っても、進捗を同じ物差しで比べられます。

区切り方向いているケースステージが動くタイミング
時期で区切る期間と月ごとのやることが決まっている月が変わったとき
回数で区切るミーティング回数が決まっているミーティングが終わったとき

どちらを選ぶかは、自社のオンボーディングが「期間」で設計されているか、「回数」で設計されているかで決めます。


3. 止まる典型的なポイント:顧客マターの宿題

オンボーディングが止まる場所には、典型があります。

顧客側で宿題が進まないなど、顧客マターで滞留するケースです。

CSM側の作業は、CSMが動けば進みます。しかし、お客様にお願いした作業は、お客様が動かなければ進みません。お客様にとってオンボーディングは本業の合間にやる作業です。宿題は後回しにされやすく、気づけば次のミーティングまでに何も進んでいない、ということが起きます。

CRMのオンボーディングで特に止まる場所

CRMのオンボーディングでは、止まる場所がさらにはっきりしています。

  • データ移管:既存のExcelや旧システムからデータを移す作業は、難易度が高い
  • 社内調整:どの部署のデータをどう入れるか、誰がどう使うかを社内で決める調整が、ボトルネックになりやすい

データ移管は、既存データの整理から始まります。重複の確認、項目の対応づけ、どこまで移すかの判断。お客様の社内でしか判断できないことが多く、時間がかかります。そして社内調整は、関係者が増えるほど時間がかかります。

データ移行の進め方そのものは、HubSpotへのデータ移行|3つの方法と自力でやれる範囲にまとめています。


4. 対策:止まる場所を先に把握し、早めにボールを渡す

ここが、この記事で最も伝えたいことです。

止まりやすいポイントは、事前に分かっています。データ移管、社内調整。だからこそ、止まりやすいポイントをあらかじめ把握しておき、時間がかかる前提で、早め早めにお客様へボールを渡して進めます。

たとえば、データ移管が3ヶ月目の作業だとしても、1ヶ月目の段階で「移すデータの洗い出し」を宿題として渡しておく。社内調整が必要な項目は、最初のミーティングで「誰に確認が必要か」を洗い出しておく。お客様の社内で時間がかかる作業ほど、前倒しで着手してもらいます。

なぜ早めに渡すのか

理由は単純です。お客様側の作業は、CSMがコントロールできないからです。

CSM側の作業は、遅れても自分で巻き返せます。しかしお客様側の作業は、渡すのが遅れれば、その分だけ全体が遅れます。後からどれだけ急かしても、お客様の社内調整が早く進むわけではありません。止まる場所が分かっているなら、そこに早くボールを置いておくことが、全体の期間を延ばさない唯一の方法です。

顧客側で止まったときの動き方

それでも止まることはあります。その場合は、止まっている理由を具体的に聞くことから始めます。

作業量が多くて手が回らないのか、社内の誰かの判断待ちなのか、やり方が分からないのか。理由によって、CSMが手伝える範囲が変わります。やり方が分からないなら手順を示す。判断待ちなら、判断に必要な材料を揃える。「進めてください」と繰り返すだけでは、状況は変わりません。

導入期間が延びる原因については、HubSpot導入にかかる期間|プラン別の目安と延びる原因も参考にしてください。


5. 実際の事例

筆者が支援した宿泊・リゾート事業者向け業務管理SaaSの企業(10名前後)では、営業管理はHighrise、問い合わせはGmailの共有アドレスという状態から、HubSpotへ移行しました。旧CRMにはAPIがなく、データ移管は難易度の高い作業です。

ここでは、オブジェクトマッピング、プロパティマッピング、関連付けの設計、少量でのテスト投入という順序を守り、設計が固まってから本番データを移しました。お客様自身が移行を実行できる形で進め、全6回・約2.5ヶ月で営業・サポート両部門のカットオーバーを完了しています。

→ HighriseからHubSpotへ移行――2.5ヶ月で営業・サポートを統一

また、設定の複雑さで導入が止まっていたWebマーケティング企業では、2ヶ月のレクチャー型支援でHubSpot Starterを稼働まで伴走しました。

→ Gmailの顧客管理をHubSpot Starterへ――2ヶ月でCRM稼働

Service Hubの導入で、プロジェクト管理がどれだけ重要かは、HubSpot Service Hub導入|運用を止めない手順にまとめています。


6. やりすぎると壊れるケース:ステージを細かくしすぎる

オンボーディングの進捗を正確に把握したいあまり、ステージを細かくしすぎると壊れます。

「アカウント発行」「初期設定完了」「ユーザー招待完了」「データ洗い出し完了」「データ整形完了」「テストインポート完了」……と、作業のたびにステージを切ると、CSMがステージ更新に追われます。 本来お客様と向き合うべき時間が、パイプラインを更新する時間に変わります。

そして更新が追いつかなくなると、パイプラインが実態とずれ始めます。ずれたパイプラインは、誰にも見られなくなります。ステージは、時期または回数という大きな区切りにとどめてください。細かい作業の進捗は、タスクやチェックリストで管理すれば十分です。


7. やるべきケース・やりすぎると壊れるケース

パイプライン管理をやるべきケース

  • オンボーディング中のお客様の進捗が、担当CSMにしか分からない
  • 予定の期間を過ぎているお客様に、気づくのが遅れる
  • データ移管や社内調整で、毎回同じように止まっている

やりすぎると壊れるケース

  • 作業のたびにステージを切り、CSMが更新に追われている
  • 止まりやすい作業を、予定の月になるまでお客様に渡していない
  • 止まっている理由を聞かずに、催促だけを繰り返している

よくある質問(FAQ)

Q. オンボーディングのステージは、時期と回数のどちらで区切るべきですか?

A. 自社のオンボーディングの設計で決めます。期間と月ごとのやることが決まっているなら時期で区切り、1ヶ月目・2ヶ月目・3ヶ月目とステージを動かします。ミーティング回数が決まっているなら、その回数で区切ります。どちらの場合も、ステージは大きな区切りにとどめてください。

Q. オンボーディングが止まりやすいのはどこですか?

A. 顧客側で宿題が進まないなど、顧客マターで滞留するケースです。CRMのオンボーディングでは、データ移管の難易度が高く、社内調整がボトルネックになりやすいです。

Q. 顧客側で作業が止まったとき、CSMはどう動けばいいですか?

A. まず止まっている理由を具体的に聞きます。手が回らないのか、判断待ちなのか、やり方が分からないのかで打ち手が変わります。そもそも止まりやすいポイントは事前に分かっているので、時間がかかる前提で早め早めにお客様へボールを渡しておくことが最大の対策です。

Q. オンボーディング完了の定義はどう決めればいいですか?

A. パイプラインの最終ステージとして定義します。時期で区切るなら最終月の終了、回数で区切るなら最終回のミーティング終了が基本の区切りです。そのうえで、データ移管が終わりお客様が実際に運用を始めている状態を完了の条件にしておくと、完了後に利用が止まる事態を防げます。


まとめ:止まる場所に、早くボールを置く

判断軸は1行です。オンボーディングは大きな区切りでステージを管理し、止まりやすいデータ移管と社内調整は時間がかかる前提で早めにお客様へボールを渡すこと。

止まる場所は、事前に分かっています。分かっているなら、そこに早く手を打つ。CSMがコントロールできないお客様側の作業ほど、前倒しで渡しておくことが、オンボーディングを予定どおりに終わらせる方法です。


オンボーディングの設計でお困りなら

「オンボーディングの進捗をチームで見えるようにしたい」「データ移管で毎回止まる」——判断に迷う場合は、Harekaにご相談ください。

HubSpot JapanのCSMとして200社以上を支援した代表が、初回のご相談から定着まで一貫して担当する体制で、止まらないオンボーディングの設計を一緒に作ります。

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